チャリング・クロス街84番地 書物を愛する人のための本

チャリング・クロス街84番地―書物を愛する人のための本 (中公文庫)

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愛すべき古書店街

ロンドン中心部のチャリング・クロス通り沿いには、小さな古書店が軒を連ねる古書店街がある。2012年にこの近くに住んでいた僕は、時間を見つけては掘り出し物探しに出かけていたのが懐かしい。この古書店街は、ご多聞に漏れず、近年徐々に店が減りつつあるというが、そこで感じた好事家たちの熱気や本に対する敬意のようなものは、かつて栄えた頃のチャリング・クロス街からきっと変わっていないように思えた。

もしあなたが、こうした昔ながらの古書店街が好きな本好きなら、是非おススメしたい本がある。それが、まさにこの街を舞台にした小説『チャリング・クロス街84番地』だ。この小説は、本を通じた人々のあたたかいコミュニケーションをモチーフにした不朽の名作である。

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本好きの間で交わされる文通

この物語は、ある本好きの女性がチャリング・クロスの古書店に希少本の在庫を尋ねる手紙から始まる。この手紙は実はニューヨークに住む作者自身が実際に書いたもので、これをきっかけに始まった本好きの彼女と遠く離れた書店員たちとの手紙のやりとりをそのまま物語にしている。内容の多くは作者が探している本の有無を尋ねたり、書店員が入荷や発送の状況を知らせる事務的な内容が綴られており、反対に言えば書き手の人物像について直接描かれることはない。

しかし、作者のユーモアにあふれた言い回しや、古書店の店長フランクのあたたかく丁寧な返信を通じて、両者の間に友情が芽生えていくようすが、浮き上がるように描かれている。この文通は、1949年に始まり、20年後の1969年まで続いたことを見ても、親密さがうかがえる。

 

ちいさな贈り物

読後には、実際には一度も直接会ったことのない者同士の手紙の行間から滲み出る、彼らの喜びの表情や互いを気に掛ける気持ちが、心地よく心に残る。注文した本の到着を待ち焦がれる作者の期待感、書店員たちを気遣うあたたかいジョーク。そんな彼女を慕い、ロンドンの近況や新しく入荷した希少本を伝える書店員たちの熱心さ。こうしたささやかなやり取りが続くストーリーは、退屈に感じられるものかもしれない。しかし、この物語の良さは、まさにそのささやかさにあるのだと思う。この物語は、この“効率主義”的な時代において、心を通わせることの大切さを読者に教えてくれる。



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