広告ビジネス 次の10年

広告ビジネス次の10年

広告マンの8割はいらなくなる

著者の横山隆治は、本書の冒頭で「広告マンの8割は必要ない人材になる」と明言する。これまで、日本の広告ビジネスはテレビ局と電通を頂点に、「広告枠」という利権で稼いできた。もちろん、広告代理店ならではのプランニングやクリエイティブも重要な価値のひとつではあるが、「あそこを通さないとできない」という構造的優位こそ、彼らの最大のパワーだったのだ。しかし、既にテレビとインターネットの接触時間が30代以下の世代で同等以上になった今、デジタルが持ち込んだ新たな広告のあり方が、既存の広告ビジネスを確実に侵食している。

著者は、総合広告代理店のADKで既存の広告モデルの強さと限界を経験し、デジタルアドバタイジングコンソーシアムの起案から現在のデジタルインテリジェンス創業までデジタルの新たな可能性を最前線で見てきた業界の第一人者だ。彼が強調する“広告ビジネスの抜本的な転換”は、単なる大胆な理想論などではなく、差し迫った生き残りの必要条件であることがリアルに伝わってくる。

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広告業界で“既に”起きている変化

大事なことは、広告ビジネスの変化は“これから”ではなく“既に”起きているということだ。著者は、変化を捉える衝撃的なファクトを様々な視点から紹介している。ここでは、特に象徴的だと思ったものをいくつか紹介したい。

広告主が自社内に広告代理店機能を設置している割合(アメリカ)
設置している 58%
→既に半数以上の広告主が内製化している
ANA Press Release(September 5, 2013)

デジタルメディアでの収益ランキング(グローバル)
1位  Google 3兆6400億円
7位  WPP   4710億円
14位 電通   2900億円
→広告業界の枠外にこそ本当の競合がいる
paidContent「paidContent 50: The world’s most successful digital media companies」(2012)

広告代理店の売上総利益トップ20(アメリカ)
デジタル   11/20社
PR・SNS系  3/20社
その他      6/20社
→デジタルの重要性は利益ベースで見ると明らか
Advertising Age DataCenter「Largest U.S. Agencies from All Disciplines」(2012)

 

変化に対応するための戦略キーワード

では、これらの変化は広告ビジネスの今後の戦略にどのような影響を与えるのだろうか。大きなパラダイムシフトを象徴するキーワードをいくつか挙げながら、これからのマーケティングモデルに求められる要素を考えてみたい。

デジタル化→マーケティング最適化

デジタルマーケティングとは、デジタルソリューションを提供することではなく、デジタルで得たデータや知見をもとに、マスもBTLも含めてマーケティング全体を最適化すること。デジタルソリューション単品で戦うプレーヤーは、既にコモディティ化し、収益低下で苦戦している。機能を統合するオーケストレーターのポジションを目指すことが重要。

「枠」→「人」

「どこに掲載するか」ではなく「誰に配信するか」が今後の広告配信においては重要。その配信先を決定づけるユーザーデータは買い手側が保有しており、既存の構造ではデータの流通に介在できない広告代理店がいかにそこに食い込むか。近年のトレンドとしては、アドテクやコンサルからのアクセス権確保。

仮説の「言い切り型」→データからの「文脈発見型」

カッコいいCMを打って月1でGRPをモニタリングする往年のやり方は通用しない。細かくプロモーションを打って効果測定し、週次でクリエイティブを変えてしまうくらいの泥臭い高速PDCAの方が、デジタルの世界ではROIが高まるのが現実。総合広告代理店社員の心理的抵抗感を乗り越える抜本策が必要。

一流エージェンシー→ビジネス開発のプロ

クライアントのROI意識が高まり、責任者が宣伝部からCMO・事業部に変わる中で、いわゆる広告ビジネスの枠からはみ出た戦略PRにおける「情報クリエイティブ」や、コンテンツを企画、制作、実施する「ブランデッドコンテンツ」まで求められることが増えている。さらに、Shufoo!や食べログなど、消費者への直接的サービスもマーケティング手段としてのプレゼンスを増しており、事業を創るための人や投資の体制構築がポイント。



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