爆笑問題のニッポンの教養 人間は考える腸である

爆笑問題のニッポンの教養 人間は考える腸である 腸管免疫学 (爆笑問題のニッポンの教養 14)

腸の実験室

今回の「爆笑問題のニッポンの教養」、舞台は湘南の日本大学生物資源科学部。訪ねたのは、有名な藤田紘一郎教授と並ぶ斯界の権威で、酪農・乳業分野のノーベル賞と言われる国際酪農連盟賞をアジアではじめて受賞もしている腸管免疫学者、上野川修一教授だ。

腸管免疫学と言えば、僕は藤田紘一郎の著作で既に腸の仕組みや腸内細菌との関係を学んでいたが、今回の話ではより具体的な免疫系の仕組みの講義や、顕微鏡で見る腸内細菌(ビフィズス菌、ラクトバチルス菌、バクテロイデス菌)など、実験室のリアルさを体感できたのが印象的だ。もともとは地味な研究対象としてなかなか研究が進んでこなかった腸だが、近年明らかになってきた「第二の脳」としての機能は、驚くと同時に純粋に面白い。

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腸内フローラ

腸内には、花畑(フローラ)のようにまとまりをもった細菌群が無数に生息している。細菌と花のイメージのギャップが面白いが、この様子を「腸内フローラ」と呼ぶのだという。重量約1kg、種類にして約400もの腸内細菌は、善玉菌、悪玉菌、日和見菌の大きく3つに分けられる。

僕らは普段、ヨーグルトなどに含まれる善玉菌に注目しがちだが、悪玉菌も免疫系を作る上で欠かせない存在である。例えば、クロウトリジウムという菌は、アンモニアなど悪臭のある物質を作る腐敗菌の一種で病原性を有するが、この菌が定着することで、大腸の免疫が整うと言われる。病原体の毒性を弱くしてワクチンにするように、善玉と悪玉を共存させることで悪玉を腸内で飼い殺しておき、適度な具合に免疫系を作らせるようすをイメージすると分かりやすい。つまり、様々な腸内細菌を「清濁併せ呑む」ことで、腸は全体のバランスを取っているわけである。

 

共生と寛容の科学

このような、腸が持つバランスの議論というのは、科学を考える上で重要な視点だと思う。脳科学では、よく刺激と反応の1対1の関係(例:癒しの音楽でα波が出る)について研究が行われるが、腸科学は、n対nの関係というか、腸と細菌の絶妙な共生関係をどう作るかがポイントになる。上野川教授は、このことについて“寛容”というキーワードを用いて分かりやすく表現している。

実は、もともと腸管の研究は、寛容の研究から始まっているんです。では、免疫的な寛容っていうのはどういうことかというと、さっきも言ったように共生ですよ。たとえばコレラ菌だとかペスト菌なんていう病原微生物は、免疫系がやっつける。でも、腸内細菌は排除せず、受け入れているんです。それを共生、コメンソール(commensal)といいます。それが寛容、広い心ですね。



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