爆笑問題のニッポンの教養 我働くゆえに幸あり?

爆笑問題のニッポンの教養 我働く ゆえに幸あり? 教育社会学 (爆笑問題のニッポンの教養 30)

NEETって悪いこと?

今回のニッポンの教養、ゲストは教育社会学者で、NEET研究で有名な本田由紀。一括りにされてしまうNEETの実情を見つめ、NEETが生まれる社会的背景にメスを入れる本田と、自身のNEET経験も踏まえつつ、若者の側にも社会に還元できない責任があると考える太田光が交わす激論は、なかなか噛み合わず、読者からするともどかしく感じる部分もあった。しかし、両者がそれぞれに目を付けたところを統合した、新しい視点が必要なのではないかということに気付かせてくれるところもあり、楽しめる内容になっていると思う。

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なぜNEETで人を括るの?

冒頭で紹介されている本田のNEET研究の成果は、NEETを議論する上で重要な前提だ。NEETはNot in Education,Employment or Trainingの略で、初めて使われたイギリスでは、教育、雇用、職業訓練のいずれにも参加していない、義務教育を修了した16~18歳を指した。日本では対象年齢が15~34歳と幅広く、このセグメントに該当する人数は約120万人とも言われる。

では一体、このNEETというセグメンテーションから何が分かるのだろうか。イギリスの場合、NEETに貧困家庭や移民が多い事実を踏まえ、福祉的な再配分につなげた。一方の日本はどうかというと、NEETというセグメンテーション自体が独り歩きし、「働いていない」を「働く気がない」にすり替えて、批判するばかりになってはいないだろうか

 

NEETって本当はどんな人?

そんな問題意識を持つ本田は、調査によってひと括りに語られるNEETの姿を具体的に捉えた。調査によると、急増していると言われるNEETの大半は、資格試験の準備や療養等で仕事への復帰を目指す仕事予備軍であり、働く気がないという人は約40万人(調査時点で全体の1/3)から大きく増えてはいないこと。また、その約40万人というのも、既存の社会構造に生きづらさを感じられるを得ないためにひきこもりになってしまった人が含まれており、「怠けている」、「だらしない」という批判がいかに的外れなものであるかを、裏付けをもって明らかにしている。

 

NEETになるのは誰のせい?

本田は、ひきこもりを生むひとつとして、日本企業の事業構造に問題があると考えているつまり、高度経済成長時には機能した新卒一括採用⇒終身雇用の仕組みだったが、企業が成熟した事業モデルから抜け出せず、新興国とコストで競争する方向に浸っていくにつれ、派遣を切り、その分の業務は職務規定書のない正社員にしわ寄せされ、激務を強いられる。また、既卒が正社員に採用されにくい点もドロップアウトを生み出している、という指摘である。

一方で、太田は個々人の「人間力」を磨く努力にも注意を向けるべきではと、敢えて訴える。NEETを「被害者」とすることで見逃してしまうことがあるという指摘は、大切な点のように感じた。被害者である若者も、結局は現状の体制に乗ることがカンファタブルだと考えてしまっていることは、本田の指摘する既存システムの問題点を温存してしまうことにつながってしまうからだ。

 

いろんなロールモデルを想像できるか?

両者の議論を最後まで読み通して、読後に頭に残ったのは「将来像を輻輳化するパターナリズム」だ。いい学校、いい会社という単純な成功モデルが明らかに崩れている今、本当に求められるのは体制にとっては、中途を含めた優秀な人材を活用できるよう、魅力的なキャリアを用意することであり、個人にとっては、将来の“自己実現”像に対して多様な発想をできる、経験の厚みをつけることではないか。

そのように、これまでのルールをひっくり返すようなロールモデルを想像できる企業、個人こそが、中長期的には活躍できるようなフィールドを作っていくことが、手当として重要になってくると思う。



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