爆笑問題のニッポンの教養 タイムマシンは宇宙の扉を開く

爆笑問題のニッポンの教養 タイムマシンは宇宙の扉を開く 宇宙物理学 (爆笑問題のニッポンの教養 10)

宇宙論、入門の入門

今回の「ニッポンの教養」は、宇宙物理学者の第一人者、佐藤勝彦東京大学教授との対談である。

宇宙論といえば、素粒子統一理論や超ひも理論など、画期的な理論が現在進行形で生まれている

領域だが、門外漢から見ると、なかなか感覚的にも理解しにくい分野である。

僕自身も、宇宙論の泰斗ホーキング博士の著作を苦労して読んだ記憶がある。

そのためか、今回の爆笑問題の対談も、普段より難しめの内容になっているが、

それでも、最新の理論について、ほんの“さわり”ではあるが分かりやすく教えてくれているので、

宇宙論に興味はあるものの足踏みをしているあなたにおすすめの内容となっている。

 

時間がねじれる

今僕たちが地球で眺めている星の光は、遠い昔に発せられたものがようやく地球に届いた光だ

という話を聞いたことがあると思う。これを生き物に当てはめてみると、非常に面白いことが起こる。

例えば、同い年の2人、Aさんが地球、Bさんがが火星にいるとしよう。

その状態でお互いを眺められると仮定すると、光が2人の間を移動する時間分だけ、

過去を見ることになるため、お互い、相手が自分より若い姿を見ることになるわけだ。

更に言えば、どこか遠い星から地球を眺めたら、恐竜が生きている様子が見えるかもしれない。

これだけでもちょっと不思議な感じがするが、今度はAさんとBさんを移動させてみよう。

AさんがBさんより高速で移動した場合、Aさんの方がBさんより時間の進み方が遅くなるという。

これはつまり、Bさんの時間の進み方が普通だとすれば、Aさんは徐々に未来へワープしていることになる。

実際、東京-博多を新幹線で移動すると、10億分の1秒だけ未来に行けるというから驚きだ。

こうした時間の進み方のズレは、“双子のパラドクス”と呼ばれる。

 

タイムマシンはできるか

相対性理論は、このような時間の概念を変える画期的な発見をしたのだが、

宇宙論の最先端では、この相対性理論が抱えるパラドクスにぶつかっているのだという。

具体的には、相対性理論を突き詰めると、時間は可逆的なもの(過去にも戻れる)になってしまう。

つまり、タイムトラベルが可能になるわけだが、そうだとすると、タイムマシンで過去の世界に行って、

自分を生む前の母親を殺した場合、自分は生まれなくなる。しかし、その生まれるはずのない自分が、

なぜ過去に遡って母親を殺せるのかという自己矛盾が生じるわけだ。これを“親殺しのパラドクス”と言う。

そこで、ホーキング博士をはじめとする研究者が持ち出したのが、量子論である。

量子論では、過去へのタイムトラベルをするためには、場の力が無限大にならなければならないために

実現不可能であり、時間の順序は過去から未来への一方通行とされる(“時間順序保護仮説”と言う)。

なお、この量子論は、宇宙の誕生の瞬間において“無”から“有”が生まれたことを説明するカギとしても、

重要なピースを担っているのだという(“真空の相転移”)。

 

宇宙が解明しつくされた先には

このあたりの議論は、やはりどうしても理解するのが難しい。

しかし、佐藤教授の話を聞けば聞くほど、宇宙についてほとんど未解明だということは実感できる。

先の“時間順序保護仮説”にしても“真空の相転移”にしても、現時点ではあくまで“試み”であり、

まだまだ未知の領域が広がっている分野なのである。

宇宙の起源、ひいては僕らの起源を探る宇宙論が解明された暁に、僕らは何を見るのか。

物理学で解明された宇宙の姿に、僕らは何らかの意味を見出すことはできるのだろうか。

こうした問題意識に発して、後半では太田光と佐藤教授の間で哲学論議が交わされている。

自然の法則に従って生きている僕らと、記憶や想像を駆使して法則を抜け出してしまう僕ら。

宇宙の本質に迫る研究が進むからこそ、物理学に還元されない何か(ウィトゲンシュタインで言えば

“示されるもの”)に対する探究も、僕らにとってより必要になってくるのだろう。



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