ベーシック会社法入門

ベーシック 会社法入門〈第6版〉 (日経文庫)

会社法を広く浅く知る第1歩に最適

新書・文庫サイズの会社法の参考書には、『会社法入門』(神田秀樹)と本書がある。神田会社法は、会社法成立の背景と会社法で導入された制度を中心と扱っているのに対し、本書は、会社法の改正ごとにバージョンアップし、最新トピックをカバーしながら、会社法の幅広い論点を広く浅く解説した参考書である。会社法全体の構成に一通り目を通したい、いきなり難解な法理論に入る前に分かりやすい文章で基礎を理解したいという初学者向けの、大学でもしばしば参考書籍に挙げられる定番の入門書だ。

 

『ベーシック会社法入門』
目次

 

会社法のトレンド

本書でも大きく取り上げられているが、近年の起業や組織再編の柔軟化の流れを受けて、会社法においては、それに対応した規制緩和と選択肢の多様化、と同時にフェールセーフを担保する整備が行われているのが特徴だ。例えば、法人の形態に、合同会社(LLC)と有限責任事業組合(LLP)が加わった。

合同会社は全員有限責任の構成員からなる組織で、現物出資に検査役が要求されず、決算公告の義務もなく、会計監査人設置も必要がないという簡易的株式会社の体を採っている。そのため、定款に将来の株式会社への変更を定めておくベンチャーなどに有利である。

有限責任事業組合は合同会社同様、社内の自治裁量に自由が利き、法人課税ではなく構成員課税されることにも魅力がある(ただし、その分法人格がない)。このあたりの法人形態の話は、会社法の冒頭に無機質に書いてあるので読み飛ばしやすいが、

このように、企業の目的や規模、事業の特性等に合わせて、より柔軟な会社の形態を採ることができるようになったというところは着目しておくべきだ。

 

様々な実験的試み

また、持株数に応じて取締役を選出する比例代表的な「累積投票制度」という面白い制度もある。これは、各株主が保有する1株につき、選任される取締役の数(例:3人)と同数の議決権(3つ)を与え、株主はその議決権を1人に集中投票することも、2人以上に分散して投票もできる制度である。これは、少数株主の意見を反映させることができる一方、取締役会が少数/多数株主の衝突の場になってしまう可能性がある点で望ましくないとも言える。

実際には、本制度を採用しないと定款に定めている会社がほとんどだという。一方で、会社合併において、消滅会社の規模が存続会社の規模に比して小さい場合に、存続会社の承認総会を原則として省略できる簡易合併手続きの範囲が拡大され、「特別支配会社」(90%以上)の場合には消滅会社の合併承認決議も省略できるようにする(略式合併)など、頻繁に組織再編が行われる現状に即して利害関係上、特段問題にならないと想定される手続きについては簡素化される方向性もある。

このように、実務上はどうなんだと思うような斬新なものを含めて、テクニカルに色々な試みがなされているところに注目すると会社法が面白くなってくる。



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