事業再生

事業再生 (角川oneテーマ21)

事業再生の誕生

今や様々な手続きが確立されつつある「事業再生」。

この事業再生(=Business Recovery)のビジネスを本場アメリカから輸入し、

現在のプロフェッショナルサービスの姿を作り上げた第一人者が本書の著者、田作朋雄だ。

田作は、日本債券信用銀行で20年もの間、事業再生に関わった後、

プライスウォーターハウス クーパース・フィナンシャル・アドバイザリー・サービス(PwC FAS)に

移ってからも、一貫して事業再生畑を歩き続けている。

本書は、そんな彼が日本における事業再生の誕生を自身のキャリアとともに振り返り、

また、道半ばの事業再生がこれから乗り越えるべき課題を概括的に示している。

第1章 再生までの180日
第2章 事業再生アドバイザーへの歩み
第3章 民事再生法誕生が日本を変える
第4章 DIPファイナンスとは何か
第5章 不良債権処理ビジネスの今後
第6章 事業再生と今後の日本

事業再生の歴史

前半では、田作の生い立ちから、留学時代の話、NY支店時代の不良債権処理の話など、

事業再生アドバイザーになるまでの思いと世の中の変化が描かれていく。

その中でも、アパレルの仕入・販売をしているY社の再生事例は、PwCの専門家が

ウォールームにこもって再生の道を検討していく姿をイメージできて面白い。

しかし、事業再生が物珍しかった頃は別にしても、今読むものとしては内容の深さが物足りない。

M&Aアドバイザーの裏側をリアルに知りたいなら、僕の先輩コンサルタントの上司だった

村藤功の『M&Aアドバイザーの秘密』の方が断然お勧めできる。

 

再生手続きを知る

後半では、事業再生ビジネスのさわりの部分が論じられている。

事業再生手続きのバリエーション、DIPファイナンスや不良債権処理の役割と手法。

これらに共通するのは、債権者への分配の最大化や取引先への延焼の防止に留まらず、

リセットした会社を再成長させることでリターンを最大化する積極的な手法としての意味である。

例えば、事業再生手続きでは、昔の破産法や和議法といった“つぶれた会社の処理”的発想から、

民事再生法の成立をターニングポイントに、会社更生法やADR手続きなど、

本業の毀損を防いでスピーディに再成長に乗せるための手続きが発達している。

このあたりは、事業再生の初心者にとっても手軽な読み物として重宝する。

 

再生戦略が不足

一方で、再成長のコアとなるケイパビリティの見極めや、再生手続き後のバリューアップなどの

戦略コンサルティング、マネジメントコンサルティングに関する記述は中途半端な感が拭えない。

整理回収機構企業再生検討委員会委員、サービサー業務研究会幹事など、

再生畑バンカーとしての彼のキャリアを考えると、得意領域ではないのだろう。

このあたりは、会計系のコンピテンシーを中心とするPwCの苦手分野を如実に表している気がする。

事業再生の中身に踏み込むなら、再生マネジメントの専門書をあたった方がいいと思う。



この本についてひとこと