クリスマス・キャロル

クリスマス・キャロル (新潮文庫) Penguin Readers: Level 2 A CHRISTMAS CAROL (Penguin Readers, Level 2)

クリスマスに毎年読み返す1冊

100ページちょっとの短いストーリーながら、とても内容の濃い、そして心温まる小説。

この物語が描き出す、ぱちぱちと薪のはぜる暖炉と暖かい色の光のランプのある家と、

クリスマス近づいた雪の降る街のそわそわした賑わいというイメージは、

読むたびにあのクリスマスの喜びにあふれた瞬間をいつでも思い出させてくれる。

貧しい子供時代を過ごしたディケンズが物語に託した夢の世界がこんなにも読みつがれるとは。

ロンドンのBritish Libraryでディケンズの軌跡を知ってからは、より感慨が深くなった。

『クリスマス・キャロル』は、ディケンズの原作の他にも、児童向けやディズニー版など、

大人から子供まで楽しめる作品が揃っているのも魅力だ。

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吝嗇家スクルージを待つ不幸

主人公のスクルージは、マーレイとともに設立した会社の経営者で、とても裕福だった。

ただし、人との関わりを拒絶し、つまらない吝嗇家だと周りからも思われても無関心だった。

クリスマスを祝うことも関心がなく、困っている人を助けることなど考えたことがなかった。

しかし、ある年のクリスマスイブの夜、亡きマーレイが幽霊となってスクルージの前にあらわれるのだった。

マーレイは生前の、スクルージと同じような自分の行いを深く反省しており、

友人であるスクルージが同じ運命を辿らないよう忠告しに来たのであった。

そして、これから三夜連続してあらわれる3人の幽霊に会えと言い残していった。

はたして予言通りスクルージのもとに現れた3人の幽霊は、スクルージをつれて、様々な場面を見せる。

ひとつは、昔のスクルージが過ごした楽しいクリスマスの日々、ふたつめは、日頃会社で怒鳴ったり

遅くまで働かせている秘書のクラチット一家がスクルージに対する感謝を祈っている場面、

そして最後に、未来の自分のクリスマスに、どれだけ悲しい結末が待っているかという辛い現実も。

 

相手のことを思うクリスマス

周りの仲間たちが自分に対してどれだけ愛情をかけてくれていることか、

そして、それを裏切るとどんなにつまらないことになってしまうのか。

普段は当たり前と思いがちなことを、分かりやすい言葉で、美しい描写で教えてくれる。

もちろんこの物語の教訓は必ずこうあるべきだ、などということはナンセンスだと思う。

けれど、三夜を過ごした後のスクルージの姿を見れば、言葉にせずとも感じるものがある。

相手のことを思うことで、かえって自分が積極的に「生きたい」と強く願うようになるという

生きることの喜びがスクルージの姿を通して、自然と語りかけてくるのだ。

「共感の手」を伸ばすことで、世の中にはいろんな喜びが待っている。

そんな素朴なことを改めて信じたくなる、そんな物語だ。

スクルージを最後に待っているもの、それは読んでのお楽しみ。



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