つなげる広告

つなげる広告 共感、ソーシャル、ゲームで築く顧客との新しい関係性 (アスキー新書)

より非広告で、より長期的なコミュニケーション

インターネットが出現し、情報が洪水のように爆発的に増え、大抵のことは差別化しつくされた成熟市場において、あえて「広告」を見たいという期待値はどんどんと下がっている。そんな新しい消費者の気持ちに答えるには、マーケティングの発想を自分のベストショットをかたどったラブレターをベストタイミングで渡す“広告発想”(B to B)から、相手の気持ちをくんで自分自身を相手好みに変える“コミュニケーション発想”(B to C)にシフトすることがカギだと、繰り返し論じられてきた。

こうした発想は、名著『明日の広告』をはじめ、様々なところで語りつくされてきた感がある。だから、同じ文脈の本書『つなげる広告』は、『明日の広告』読者には退屈かもしれない。それでも、本書を新たに読んで得られた収穫が3つあった。

 

より「広告」を離れたコミュニケーションのあり方

敢えて言うなら、『明日の広告』は広告をコミュニケーション・デザイン発想で見直そうという広告代理店的な議論がまだ色濃かったようにも感じられる。しかし、本書では“待ち伏せ型”の広告を大きく飛び越えて、新しいコミュニケーションメディアを消費者と創ってしまおうという発想に振れている。

広告の未来像を、新しい広告モデル展開への期待が膨らむビッグデータと、従来型マスメディア広告のさらなる高度化の延長線との交差する点だけに置いていては行き着く先はマイノリティリポートのように広告が待ち伏せている世界でしかない。いくらOne to Oneが進化しようと、消費者の気持ち悪さは根本的に消えないのだ

著者は、あるべきコミュニケーションのあり方を3つの視点から定義している

①企業と生活者、生活者と生活者をつなげる「関係構築」
②その上をバトンリレーのようにつなげて広がる「自走するコンテンツ」
③単発で終わらない、次につなげる「持続性、継続性を保つ仕掛け」

 

例えば、コカ・コーラがアメリカのスーパーボウルで流したTVCMは、マスコットのポーラーベアが視聴者と同じようにスーパーボウルを観戦しているだけのCMだ。同社のピオ・シュンカー氏が「生活者には普段どおりのことだけをしてもらえればいい」と語ったと紹介されているが、CMでさえ既に一方的にメッセージを送ることから姿を変え、消費者の自分事化(レリバンシー)を促すコミュニケーションの一部になっている。 

また、コカ・コーラ「フレンドシップ・マシーン」では、肩車しないと届かないほど背の高い自動販売機を設置し、2人で協力すれば1本の値段で2本もらえる仕掛けを作った。みんなで喜びをシェアするという世界観を、メッセージや映像の押しつけで伝えるのではなく、生活者自身が体験することで共感するニクい仕掛けだ。 

より継続的なリレーションの築き方

著者は『ロングエンゲージメント』という著作でも知られており、単発のコミュニケーションキャンペーンに留まらない関係構築について詳しい。著者は継続的なリレーション構築のカギとして、ゲーミフィケーションの発想に着目している。敢えて手間のかかる課題に参加したいという「ソーヤー効果」によって、つながり続けることに対する内発的動機付けを駆動させるきっかけになるからだ。

ソーヤー効果

トム・ソーヤーは、家の板塀にペンキを塗る仕事を命じられた。ペンキを塗るトムを見た友達のベンは、トムを冷やかすのだが、トムが「ペンキを塗らせてもらえるなんてこんなチャンスはない」と嬉しそうに言うのを聞いて、自分にもやらせてほしいと頼んだ。しかし、トムが断ったため、やらせてくれたらリンゴをあげると言って、リンゴをあげてまでペンキ塗りをしたのだった。

オバマ大統領の選挙キャンペーン「MyBO」はゲーミフィケーションの有名な事例だ。「MyBO」では、選挙を応援するボランティアの活動を可視化し、活動した人の貢献が評価されたり、特に貢献した人は特別イベントに招待されたりと、非貨幣の報酬をうまく組み込んで、人々の意欲を引き出し、選挙に大きく貢献した。

myBO

エストレラの「カムバック・フェロラマ」キャンペーンは、鉄道模型メーカーの同社の社長が20キロ先のゴールまで短いレールをつないでフェロラマを走り続けさせることができたら生産中止となっていた鉄道模型を復活させよう、と呼びかけたことがはじまりだ。ファンたちは協力し合い、再生産を実現し、再生産されたフェロラマは完売した。



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