2015年の建設・不動産業

2015年の建設・不動産業

近年では、しばしば経営の大方針としての長期的なビジョンが描きにくくなったと言われる。

ライフスタイルが多様化し、細かなニーズへの日々の対応が優先されがちなことと、

代替品の垣根が低くなり、異業種間の競争が激しくなったことの2点により、

製品・サービスのライフサイクルは急激に短縮し、経営の目線はどんどん短期化していく。

実際、事業会社の長期ビジョンをレビューする場合、3年先を見通すのが限界の企業が多い。

一方で、見通しの悪いときこそ揺るがぬ足場(ポジショニング)を模索し、

足腰の強い将来像を、社員や株主に提示することが求められているというのも確かである。

本書は、建設・不動産業の市場動向を詳細に分析し、将来のプロフィットプールのあり方について

仮説を提示する流れをとっており、長期ビジョンを描く際に不可欠な、

外部環境の分析プロセスを体感する上で役に立つ1冊である

(総研系お得意の業界知識の宣伝本だが、データベースとして重宝する)。

 

本書の前半では、以下のイシューを中心に、建設・不動産市場の構造的成熟を示している。

本書には、以上に基づく2015年時点の建設・不動産市場の規模が推計されており、

この数字だけでも貴重な情報である(なお、リーマンショック後の環境変化は含まないため、

利用の際にはパラメータを調整して推計し直す必要がある)。

また、分析の方法や情報の出所等を細かく見ていくと、実際に自分で手を動かす際の参考にもなる。

 

後半では、市場規模の大きい住宅と不動産に的を絞って、より詳細な分析と今後の方向性に話を進めている。

個人的には特に、住宅市場の成熟と連動した、住宅設備・建材業界の分析が興味深かった。

住宅設備・建材は、住宅にデフォルトで組み込ませることが、安定的に受注するための基本的なKFSだ。

したがって、住宅メーカーとのチャネル拡大を狙った合従連衡が勃発するのは当然の流れである。

ただし、この戦術は単純な体力勝負のため、トップ以外は全敗というレッドオーシャンになりやすい。

一方で、住宅組み込みによる受注ではなく、製品の安全性等を売りに、

消費者から直接選ばれる魅力を強化する取り組みがある。

こちらは、減少が見込まれる新設の住宅数ではなく、設備・建材の取り換え需要に対するアプローチだ。

 

このように、自社の製品・サービスの需要はどのような指標に連動しているかをあぶり出し、

成果を最大化したり、マクロ環境の影響を最小化するパラメータとして重点的に管理することが、

戦略の方向性を明らかにする上で重要な切り口である、という示唆が本書の一番のメッセージだと思う。



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