新・会社法実務問題シリーズ9 組織再編

組織再編 (新・会社法実務問題シリーズ)

実務の蓄積から書かれた良書

組織再編取引における法的知識といえば、組織再編行為に関する基礎的な理解に加え、実務的には、スケジューリングと契約実務が大きな柱となる。本書は、上記の内容について、実務上、よく突き当たる法的論点をしっかり押さえることを方針としており、実際、僕が実務で困った点についても、かゆいところに手が届く内容を提供してくれた。

たとえば、以下のような論点には誰しも突き当たることだろう。

内容の詳細は紹介しきれないので、ここでは目次をざっと眺める形としたい。

 

第一章 組織再編の類型

1 合併

合併 (意義・種類、当事者、承継の対象) ←論点が体系的に整理されていて分かりやすい
吸収合併 (効果、記載事項、スケジュール) ←スケジュールの見本や作成のコツが重宝
新設合併 (意義、効果、特徴、記載事項、スケジュール)

 2 会社分割

会社分割 (意義・種類、当事者、対象)
吸収分割 (効果、効力発生に関する留意点、法定/任意的記載事項、スケジュール)
新設分割 (効果、効力発生に関する留意点、記載事項、スケジュール)
労働者承継手続 (雇用契約、労働者手続、労働条件・福利厚生) ←実務の悩みが解決

3 株式交換 (意義、当事者、効果、記載事項、スケジュール)
4 株式移転 (意義、効果、記載事項、スケジュール)

第二章 組織再編手続

1 組織再編の契約・計画に至る一般的な流れ ←このあたりが実はなかなか聞けない貴重な話

基本合意書まで (契機、検討体制・予備的検討、NDA、基本合意書の締結)
基本合意書 (基本合意書の意義、内容、効力)
取引保護条項 (取引保護条項の意義、種類、問題点)
デュー・ディリジェンス

2 事前備置 (事前備置とは、備置開始日、備置終了日、備置書類の内容、備置書類の閲覧者)

3 承認総会

組織再編における株主総会の承認 (承認の対象、時期、決議要件、特別利害関係人)
簡易組織再編 (簡易組織再編とは、法的効果、取締役会決議、要件、例外)
略式組織再編 (略式組織再編とは、法的効果、取締役会決議、要件、例外、産活法の特例)
種類株主総会 (必要となる場合、決議を要する/要しない定款の定め)

4 債権者保護手続 (債権者保護手続とは、保護の対象、スケジュール、内容、効果)
5 株式・新株予約権買取請求 (買取請求権制度とは、制度の概要)
6 株券等提出手続 (手続きの概要、具体的内容)
7 振替手続 (振替→振替、振替→非振替、非振替→振替、会社分割の取扱い)
8 効力発生と登記 (効力発生時期、登記との関係、効力発生日の定め方・変更、中止手続)
9 事後開示 (事後開示書類とは、備置開始日・終了日、内容、閲覧権者)
10 組織再編の無効 (無効原因、無効の訴え、無効判決の効果)

第三章 組織再編と計算 ←会計本には載ってない、適格要件に関する判断の実際がよく分かる

1 組織再編に適用される会計基準の概要 (類型、取得、逆取得、共通支配下の取引)
2 計算規則と会計基準の役割分担
3 計算規則の規律の説明 (規定の構造、合併、分割、株式交換、株式移転、のれん、特別勘定)

第四章 組織再編関連諸法の概要 ←これが1冊にまとまっているのは有難い

1 組織再編成と金融商品取引法等 (届出義務、インサイダー取引関連、米国法(F-4関連))
2 組織再編と上場規制・適時開示 (適時開示の概要、開示手続き、上場廃止とテクニカル上場)
3 組織再編と労働法 (組織再編との関係、労働組合、企業年金)
4 組織再編と独禁法 (規制、手続き、公取委の判断、排除措置命令、ガンジャンピング、海外法)

 

三位一体/“構想”・“実行”・“価値創造”

ここからは余談だが、5月・6月と言えば企業が中期経営計画を盛んに発表する恒例のシーズンである。僕もこれまでに数十社の計画を見たが、新たな事業領域・地域への展開や、社内プロセスの仕組化・効率化を狙ったM&A(組織再編)を掲げる計画が、これまで以上に増加した印象がある。

一方で、このようにM&Aの活用は「経営上の一大イベント」から「日常化」しつつあるものの、現実には、M&Aを計画に掲げる企業も、経営企画が“構想”し、アドバイザーが“実行”、“価値創造”は事業部にと担当が次々変わり、本来あるべき構想から実現まで一貫して関与できる人材・体制は不足しているのが実態である。言い換えれば、“構想”・“実行”・“価値創造”の複合スキルを併せ持つ人材・体制作りが、M&Aの成功確率を高める重要な論点だと言える。

M&A実行に際するリーガルマターは、往々にして大手弁護士事務所任せになってしまいがちだが、リーガルアドバイザーは“構想”や“価値創造”を本当のところまで踏み込んだディールデザインはしない。事業サイドが自ら法的な制約を理解し、目指すディールデザインに向けて弁護士を引っ張るくらいの意気込みと、本書のような知識の武装が必要なのだ。



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