日本中枢の崩壊

日本中枢の崩壊 (講談社文庫)

現役官僚による内部告発への評価

2011年、現役官僚が日本政府の構造的課題を内部告発する本書が上梓されると、1ヶ月で16万部と爆発的に売れ、一方で著者には批判や嫌がらせも集中した。果たして本書は、この国の改革にとってどのように評価すべき本だったのか。2014年の今、落ち着いて本書への反応を振り返ると、2つのキーワードが浮かび上がってくる。

あなたならどのように評価するだろうか。結論を急ぐ前に、著者が指摘するこの国の構造的課題を振り返っておきたい。

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Overthrow Government designed by Luis Prado from the Noun Project

既得権益の確保が優先される構造

本書が改革の最大のターゲットとするのが、省庁や東京電力の利権構造だ。本書では、長谷川幸洋ジャーナリストの取材でも今やよく知られるようになった東京電力が資本や人事で政府・メディアを手なずけている構図や、省庁が情報操作や国税局の捜査権を武器に政治家をいくらでも操れる仕組みが生々しい現場のようすを交えてしっかり描かれている。

渡辺喜美も長妻昭も、この壁に阻まれ、根本的な改革には辿り着けなかったし、著者の公務員改革法案は、明確な反論もないまま骨抜きにされていった。

 

構造に従うのはアタリマエ

東日本大震災における東京電力の対応や、原子力行政における政官学のガラパゴス的状況がいかに滑稽であろうと、このメカニズムがあの状況になってもなお変われない根深さを持っている怖さを改めて感じざるを得ない。外から見て当たり前のことを言う著者は、閑職に追いやられ、口封じに地方出張を強いられ、挙句、仙谷由人から恫喝を受けるという始末だ。

しかし、構造的に優位な立場を持つ組織が、自分を利するのは自然なことだ。そして、組織を維持・拡大することに長けた人間が当然評価される。僕もそうしたインセンティブの組織に慣れれば、同じ行動を取るようになるだろう。

 

構造自体を変える

このメカニズムが全体最適の観点から適さなくなった時、大胆なメスが必要になる。イノベーションのジレンマから抜け出すには、既存の延長線ではなく、別のインセンティブ構造にそっくり入れ替える必要があることを、僕らは政治に限らず転換点において学んできたはずだ。

著者は、官僚の新陳代謝を高めるキャリアパスへの変更や、民間資本の力学を積極的に取り入れた生産性の向上施策、それを促進するための農業等における規制の緩和など、森を見る視点から大胆な改革プランを示している。

 

沈没を待つか

こうしプランに対し、例えばTPP参加は弱者を生むものであって賛成できないなど、新自由主義の負の側面に対する憂慮を示す批判者の声も多い。しかし、そうした意見は改革の副産物にどう対応すべきかの論点として重要であるが、決して改革自体を否定する論点ではないし、是々非々で物事にあたるというだけだ。そんなことで迷っている間に、人材の海外流出やコーポレートインバージョンなど、国を見限る動きが確実に出てきているのが現実なのである。

そうした意味で、個人的には本書は構造に対して深くメスを入れるものであることをまず評価されるべきだと思うし、出版から時間が経った今も改革の詳細を議論するステージに遅々として進めないこの国の状況こそ、批判されるべきではないだろうか。



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