探偵ガリレオ

探偵ガリレオ (文春文庫)

理系ミステリの不思議な魅力

東野圭吾の「ガリレオ」シリーズは、累計発行部数が950万部を超える驚異的なヒット作となった。

僕も「ガリレオ」ファンのひとりなのだが、ここまでのヒットになるとは予想できただろうか?

なぜなら、ガリレオのように、科学の専門的知識を応用したトリックが用いられる理系ミステリは、

一般的な読者にとって、いわゆる“謎解き”そのものを楽しむにはどうしても難しい。

もちろん、トリックの大掛かりさや見たこともない科学的現象に対する驚きも、楽しみの一つだ。

しかし、やはり最大の魅力は、寡黙な中に“冷静な熱さ”を感じさせる科学者のキャラクター性ではないか。

『すべてがFになる』(森博嗣)の犀川助教授も、名探偵コナンのコナンも同系に位置する。

また、ドラマ「ガリレオ」で、探偵ガリレオに作者がモチーフにしたという佐野史郎ではなく

福山雅治を起用し、さらにキャラをデフォルメしたのも、まさに理系ミステリのツボを押さえた演出だ。

 

ガリレオ先生の好奇心

「ガリレオ」のストーリー構成自体は、いわゆるミステリの典型をなぞった形になっている。

主役は、警視庁刑事部の草薙俊平と、彼の大学同期で帝都大学理工学部物理学科の助教授 湯川学。

草薙が鉢合う難事件を、湯川が科学的知識を用いて解き明かしていくという構造は、

さながらシャーロックホームズ(湯川)とワトソン(草薙)の関係であり、ミステリの正統派と言えるだろう。

一方で、いやむしろそのようにストーリー構成自体があくまでオーソドックスであるが故に、

科学的殺害トリックに隠された謎や、それを解き明かそうとする湯川の好奇心が際立ってくる。

「ほう」湯川は黒縁眼鏡の奥の目を丸くした。「どういうことだ」
「そうだ」湯川は眉間に深い皺を刻んでいった。「事件を解決したいなら、僕のいうとおりにしてくれ」

根っからの理系オタク、湯川学が事件の謎に夢中になっていくのと同時に、

僕ら読者も物語にのめり込んでいく。

 

ガリレオ先生が挑む5つの“設問”

本書では、5つの事件で湯川助教授の謎解きを楽しむことができる。

新たな“設問”に出会った時の湯川助教授は、どこか恍惚とした表情をしている気がしてドキドキさせられる。

  1. 燃える:若者の頭が突然燃え上がる奇妙な事件には、ある真実が隠されていた
  2. 転写る:池で見つかった死体のそばには、死体そっくりのデスマスクが落ちていた
  3. 壊死る:風呂場で見つかった変死体。胸の細胞だけが丸く腐っていた
  4. 爆ぜる:ある暑い夏の日、海に浮いたビーチマットが突然巨大な火柱に包まれた
  5. 離脱る:少年が“幽体離脱”して見たものは、犯人のアリバイを証明するのか

 



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