ハーバードMBA留学記

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて

グローバルエリートは何を考えているか

今やライフネット生命の代表取締役社長兼COOとして活躍している岩瀬大輔氏。彼を一躍有名にしたのは、ハーバードMBA(HBS)に留学したときに記録していたブログだ。本書は、このブログを1冊の本にまとめ直したものである。日本人では4人目となる上位5%の優秀な成績(Baker Scholar)で卒業した彼が綴ったこのブログには、MBAの実体験がリアルに描かれているだけでなく、彼が体験したアメリカと日本のカルチャーの違いや、金融資本主義の実態ワークライフバランスに対する意識の違い、アントレプレナーシップの身近さなどなど、日本とは違った視点がつまっており、知的好奇心をかきたてられる。

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5つのLesson Learned

様々な体験や思いがつまったこの本を読んで何を感じるかは、人それぞれだと思う。僕が個人的にこの本から受け取った学び(Lesson Learned)は5つある。ここでは、その5つの視点から本書を紹介してみたいと思う。

 

人生をストレッチする/させるということ

まずMBAプログラムを疑似体験して一番に思ったのは、「地位が人を育てることがある」だ。このことは、当の岩瀬氏自身も本書の中で同じく語っていた。ハーバードのMBAで80カ国の最優秀選手と競うだけでも大きなストレッチなのだが、更に、卒業後すぐ幹部候補生として、100人からの部下をマネジメントする立場に挑んでいく。彼らは入学前もコンサルや投資銀行、事業会社のマネジャーとして活躍してきたツワモノだ。しかし、その経験+MBAのケーススタディで、何でもできるようになれるわけではない。彼らは自ら次なるチャレンジを課すことで、人一倍の成長を遂げているのだ。

こうした彼らの成長意欲を表す面白い話がある。HBSのクラスでは、ディスカッションの時に以下のような発言がバンバン飛び交うという。

“I disagree”
“I totally disagree”
“I strongly disagree”
“I cannot disagree more”
etc etc…

 

フローからストックへ(人生も投資が必要)

コンサルティングというプロフェッションとして働いていると時々感じるのは、成長曲線を駆け上がっているうちはいいが、エンドレスに走り続ける必要があるということだ。プロフェッションはフロー型(ある意味、労働集約型)の仕事なので、働いてナンボというわけだ。人的資本型のビジネスなら、誰しも共通するところがあるのではないだろうか。

しかし、どこかで一度立ち止まらないと、長距離走は走りきれないとも薄々感じる。MBAに思い切って参加してくる人は、敢えて2年の事業経験を捨てて集まってくる。MBAに限らず、今を捨てて新しい世界を見ることが必要なタイミングは、誰にも来るはず。最近、僕も今のコンサルファームの代表やOBの先輩に同じアドバイスを受けた。

 

学びの対象はいくらでも広げられる

ビジネスを学ぶというと、ロジカルシンキングやファイナンス、マーケティングなど、教科書的・体系的に学べるものをイメージしがちなところはないだろうか。MBAのプログラムが面白いのは、個々人の資質に還元されがちなアントレプレナーシップやリーダーシップ(ハーバードの看板授業)、ワークライフバランスからビジネス倫理の問題まで、フレームワーク化や体験プログラムを通じて生徒に教えようとしていることだ。

もちろん、教科書的な答えが出るテーマではない。しかし、実際の起業家との対話や、メンバー同士の遠慮のないディスカッションの中で、各々が自分なりの答え(=ディサプリン)を得ていくことで、問題解決の総合力を高めていく。ちなみに、HBSではアントレプレナーシップを以下のように定義づけ、指導可能なものとして捉えている。

アントレプレナリアル・マネジメントとは、新しい事業の立ち上げに独特な経営環境、すなわち高い不確実性、急激な成長、劇的な変化、そして限られた経営資源といった環境の下における、1つのマネジメントの手法である

 

濃い生活を送れば、活動量が質に変わる瞬間がある

ハーバードMBAの最大の特徴は、ケースディスカッションの訓練をとことん積ませることだ。ケースディスカッションをする上でのキーワードは“bias toward action”だという。つまり、とにかく行動する、成果を出すということに意識を振り向けることで、ケーススタディでありながら、実体験に近い経験を大量に積めるというわけだ。MBA生たちは、忙しい授業の合間を縫い、寝る間を惜しんで、クラブ活動やインターン、人によっては在学中に起業して、どんどんと実地訓練を重ねていく。

よく「量より質」と言われるが、それは一定の量をこなした先の話であって、よほどのレベルまでは「質より量」くらいのスタンスでいた方が学びは多いのではないか。ここでは、岩瀬氏が参加したというカンファレンスでの一流ビジネスパーソンの声を紹介したい。

ターンアラウンドマネージャーとして必要な資質は?
→間違っていてもいいので、迅速に意思決定をできること、従業員の指揮を上手に高められること、問題をrigorousに分析できる知的体力、外部の顧客・サプライヤーに行って会社の問題点を聞きだせるフットワークの軽さ。(HBS VC/PEカンファレンス)

新しい事業の可能性を評価する際に考えるべきポイントは、3つある。まず、事業の対象は、誰もが日常でやっている活動であること(つまり、市場が大きいこと)。そこに、どうにかしてくれと思う問題が存在すること。その問題を解決するソリューションを提供でき、テクノロジーを通じてなんらかの競争優位を築けること。(インテュイット(会計ソフトベンダー)創業者)

 

心・技・体、人を動かす人の魅力

リーダーシップ論について読んでいて一番感じたことは、リーダーシップは総合スポーツだということ。スタッフなら自分が優秀なら何とかなるが、自分だけが優秀なリーダーはどこかで壁にぶち当たる。人を発掘し、人を育て、人をモチベートし・・・、常にメンバーを最高の状態にもっていくには全く違うスキルが求められる。逆に言えば、そのコツをつかめばリーダーシップを強化できる。

僕が今、プロジェクトマネジャーとして抱えている問題意識に、岩瀬氏が挙げた7つのレッスンがピタッと当てはまるところが多かったので、備忘としてここに記録しておく。

レッスン1:協力と競争で融合せよ
レッスン2:早めに勝ち体験を作り上げよ
レッスン3:負けのサイクルからいち早く脱せよ
レッスン4:練習のための時間を意識的に取れ
レッスン5:ハーフタイム休憩をとれ
レッスン6:チームのメンバーはできるだけ入れ替えるな
レッスン7:ゲームのビデオを研究せよ



この本についてひとこと