リクルートのDNA 企業家精神とは何か

リクルートのDNA―起業家精神とは何か (角川oneテーマ21)

今や日本を代表する“大企業”となったリクルート、その成り立ちを知っているだろうか。

リクルートは、本書の著者、江副浩正がユニークなビジネスモデルを武器に、

裸一貫で創業したベンチャー企業から始まった。

本書は、江副自身がリクルート立ち上げのエピソードを語るところから始まっている。

立ち上げに駆け回る彼の思いの強さや、ベンチャーがどう成り立っていくのかなど、

ベンチャー経営者を目指すビジネスパーソンにとって読みどころ満載のドキュメンタリーだ。

しかし、この本が本当に面白いのは、立ち上げ期を過ぎたリクルートが、その後もベンチャー気質を

失わないどころか、次々に新しい事業を創ることができる“リクルートの文化”の秘密に触れられるからだ。

 

ひとつめの秘密は、リクルートが関わる事業の捉え方にある。

あなたなら、リクルートを何をする会社と表現するだろうか。リクルートはこうユニークに表現している。

企業と人、企業と企業を結びつける場の提供

事業の定義の仕方といえば、かつてアメリカの鉄道会社が自らの事業をあくまで“鉄道”と限定し、

“輸送”事業へと広がることができなかったという事例が有名だ。

これをマーケティング近視眼(Myopia)というが、リクルートはマーケティング遠視眼(Hyperopia)的だ。

職業情報、不動産情報、結婚情報、中古車情報、転職情報、アウトソーシング、クーポン雑誌、広告など、

なんだかゴチャゴチャした雑多な事業だが、“つなげる”という軸でケイパビリティを統一している。

だからこそ、様々な事業にチャレンジしながらも、それでもリクルートらしさを失わない。

この“縛られすぎず、緩すぎない”表現の仕方は、塩梅のいい定義として非常に参考になる。

 

もうひとつの秘密は、リクルートの最大の強みである「社員皆経営者」の起業家精神だ。

リクルートOBが起業し、成長させた企業は、一時期より減ったものの、それでも相当数にのぼる。

もちろん、リクルート内で事業化するのに難点があって、結果的にスピンアウトした(させてしまった)事例も多く、

自社内で最後まで育てられない組織的課題があるという見方もできる。

しかし、それにしても、これだけの経営人材が育っていることには、一目置くべきところがある。

リクルートは、宴会大好き、サークル気質で和気藹々という、コテコテの「日本のカイシャ」的な性格を持っているが、

実はこの内輪のお遊びの中に、競争意識や自主裁量で行動する意識が身に付く仕掛けがあるという。

どんなお遊びでも、計画を立てて競争させられる中で、自然と事業を起こす経験をさせるのだ。

もちろん、大半の事業が厳しいスクリーニング基準でふるい落とされる仕組みが一方にあることも、重要な仕掛けだ。

 

こうした秘密を裏付けに、江副氏は“目立たない”マネジメント、Management by Absenceを実現した。

起業家精神に溢れる個性的なメンバーに対し、その個性を抑圧しない“場”を提供し、最小限の干渉のみ行う。

この面白い創造的なマネジメントのあり方には、学ぶところが多いのではないだろうか。

そんなリクルートも、ここに来て大きな転機を迎えている。

リクルートは、これまで経営方針としてきた無借金経営をやめ、2007年12月にスタッフサービスを

買収するなど、M&AによるExternal Growthを選択肢のひとつに加えて長期戦略を練っている。

また、資金の調達源を借入ではなく市場にも求めようと、上場に食指を動かしているようなところも見られる。

さらに、人材の採用方針も、これまでの純血主義から中途採用へ拡大し、組織文化にも新たな転機が訪れるだろう。

このような変化の中で、それでも「リクルートのDNA」を忘れずにいられるか、気になるところだ。



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