イギリス近代史講義

イギリス近代史講義 (講談社現代新書)

イギリス史を学ぶ意味

ロンドンでひと月ほど暮らす前、イギリスの歴史を調べようと思い立ち、手軽な書籍はないものかと探したが、これがなかなか見つからない。アメリカはもちろん、発展著しいBRICs、歴史的・宗教的に長年研究されてきた中東などの文献は選り取り見取りなのに、イギリスはビジネスやカルチャーの面でつながりが強いにも関わらず、不思議と日本人一般には、あまり興味の持たれてこなかった国のようだ。

しかし、イギリスの歴史から非常に得るものが多いことは、強調してもしすぎることはない。伝統的に核家族社会であり、いち早く産業革命も経験し、金融が中心の産業フェーズにいるイギリスという先人の経験は、福祉政策論、都市・郊外論、産業構造論などの多方面で、今の僕らに貴重な教訓を与えてくれる。

 

歴史を読むための2つの視点

本書の試みは、単に一国家の歴史を紐解くのではなく、現代から見た意味を抽出するところにある。著者がいちどきに語った内容をそのまま文字にしているため、多少読みにくいところはあるが、イギリス史の大家である著者が、歴史学の本当の意味を伝えたいという意図がしっかりと感じられる。

著者がイギリス史を読み解く上でポイントとしている点は、大きく2つ。

この2つの視点から、当時のイギリスがどのような環境だったのかについて、ロンドンだけでなく各地方や植民地との関係も追うことで、今日のイギリスが作られてきた背景を丁寧に検証している。

 

①消費の歴史の視点からは、

②世界システム論の視点からは、

など、イギリス史の見方を次々と示していく著者の分析は非常に明晰だ。本書のように、物事を読み解くフレームワークを教示してくれる本は、大事にしたいものである。



この本についてひとこと