「お金と心理」の正体

「お金と心理」の正体 マーケティングの極意は「金融」にあり

お金は消費者の心を映し出す

「お金」なんて形のないものを、どうやってマーケティングしたらいいのか。例えば、銀行、証券、クレジットカード、消費者金融・・・。確かに、ポイントやらコンシェルジュやら周辺サービスで違いは作れるが、今の時代、突出していいサービスなんてなかなかあるものではない。じゃあ、どんな金融なら消費者に選ばれるのだろうか。

大手広告代理店のアサツー ディ・ケイ(ADK)の金融カテゴリーチームは、この難題に向かい続けることで、他の業界のマーケティング以上に消費者の心理を突き詰めて考えてきた。モノに頼らずにどう消費者の本性に訴えかけるか。この視点から導かれた「人を動かす8つのツボ」は、どんなマーケティングにも応用できる本質的・汎用的なインサイトだ。

 

広告マンが明かす「人を動かす8つのツボ」

金融と聞いて、あなたが思い浮かべる好印象企業はどこだろうか。僕なら、オリックス銀行、三菱東京UFJ銀行カードローン、アクサ生命、ライフネット生命だ。これらの企業には、何か他と違う、頼りがいがある、親しみやすいといった印象を受ける。僕はどれも利用したことがないので、この印象はあくまでマーケティングの影響だ。

では、これらの企業のマーケティングは、僕の心のどこに訴えかけてきたのだろうか。本書第2章で詳しく解説される「8つのツボ」は、どれも「なるほど」が詰まっている。

本書では、多数の事例をもとに「8つのツボ」が解説されているが、ここでは僕なりに先ほどの4つの企業について、「8つのツボ」に当てはめて考えてみたい。

 

オリックス銀行

オリックス銀行のCMは、イチローを起用し、変わり映えのしないメガバンクとの違いを強調した。一般人とは違うという「顧客像」を強調することで、なかなか違いの見えない銀行の中での新しさを引き立てることができたうまい事例だ。

三菱東京UFJ銀行カードローン

三菱東京UFJ銀行カードローンのCMには、ごく普通の会社員や主婦ばかりが登場する。彼らの疑問に俳優の阿部寛が答えることで、低所得層や金銭感覚の緩んだ人ではなく実は自分たちのためのカードローンがあることに気づかせる仕掛けだ。消費者金融に対する一般人の「二面脳」を絶妙に捉えたインサイトだ。

アクサ生命・ライフネット生命

アクサ生命とライフネット生命は、「業界の常識を変える」、「安心して赤ちゃんを生める」という消費者の不満や不安に寄り添う理念を、一貫して打ち出し続けている。生命保険業界では、「あなたのことを考えています」という「人肌感」だけでは差別化しにくく、そんな中で、「企業柄」や「時間軸」の視点を加えた両社が際立ったということだと思う。

 「行動の手前」に迫る

実は、著者でチームリーダーの森永さんとは何度かお話しする機会があった。若造の僕に、マーケティングについて熱心に語る中で、こんな言葉を今でも覚えている。

マーケティングで大切なことは、「行動の手前」に迫ること。消費者のリアルに迫ることができれば、CMでも人は動く。

面白さばかり追求したCMや、最大公約数的なハズレのない広告が目立つ中で、消費者心理の紐解きに心血を注ぐ姿が忘れられない。



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