フリー 無料からお金を生みだす新戦略

フリー~〈無料〉からお金を生みだす新戦略 Free: The Future of a Radical Price

「無料」ビジネスモデルのカラクリ

本書の著者は、前作『ロングテール』で有名な、WIRED誌編集長のクリス・アンダーソン。

前作では、インターネットが限界費用ゼロの世界(複製コストや陳列スペースにコストが

かからないこと)を作り出したことで、パレートの法則でいう売上の2割しか生まなかった

8割の商品が、「塵も積もれば」ビジネスを形成していることを巧みに捉えた。

本書は、この議論を下敷きにし、主にネットを中心に拡大する「無料ビジネス」を扱っている。

皆さんの中にも、何かしらの「無料」を体験した方はずいぶん多いのではないだろうか。

では、なぜ「無料」が成立するのか、どのような「無料」モデルがあるのか、

どうすれば「無料」を応用できるのか。

 

20世紀型のフリーモデル

本書では、「無料」モデルを20世紀型と21世紀型の大きく2つに分けて論じている。

まず、20世紀のフリーには、ゼリーのレシピ本を無料で配ることでゼリーを食べる食スタイルを

普及させた例、特売のタマゴは赤字でも買い物全てでペイさせるスーパーの例などがある。

これらは一見無料だが、皆さんもご存じの通り、無料(レシピ本、タマゴ)のコストを

別のもので賄う、直接的相互内部補助の構造によって成り立っている。

また、テレビやラジオ、一部の雑誌のように、広告がスポンサーになることで

買い手に番組や雑誌を無料で提供しながら、一方でスポンサーの商品・サービスの価格に

広告費を上乗せすることで、間接的にコストを回収する三者間市場のモデルもある。

 

21世紀型のフリーモデル

上記2種類のモデルは今もフリーの典型的なやり方だが、著者はインターネットにより

限界費用がゼロになったことで新たに登場した、新型(21世紀のフリー)の存在を指摘する。

その一例が、95人に無料で提供し、5人からお金を取る<フリーミアムモデル>だ。

限界費用が高いものでは、5人が無料で、95人からお金を取らなければ、損益分岐点を割ってしまう。

しかし、フリーウェアにせよ無料オンラインゲームにせよ、ソフトウェアはいくら無料で配っても

コストがかからないから、コアなハイエンド顧客のみの課金で、その他大勢を十分に支えられる

もうひとつの特徴的なモデルは、<非貨幣市場モデル>だ。

例えば、MIT(Massachusetts Institute of Technology) OpenCourseWareは、

実際に通うと目が飛び出るほど高額なMITの講義資料を無料で提供している。

学生は年に数百万円の授業料を払うのに、同じ授業が誰でも無料で受けられるのはなぜか。

MITは、直接的な対価は期待しないが、学生からの注目や評判の向上を期待している。

それによって、世界中から優秀な学生が集まり、更に研究が進歩することを優先しているのだ。

 

フリーモデル=付加価値モデル

こうした現象は、インターネットの限られた世界の話に過ぎないのだろうか。

著者は次のように述べ、事の重大さを強調している。

遅かれ早かれ、すべての会社がフリーを利用する方法や、フリーと競いあう方法を探さざるをえなくなる。

どんな業界でも、競合企業がある日、価格を「無料」にする可能性はあると考えたほうがいい。

あなたの会社は、この可能性をどのように受け止め、自社のモデルとしてどう消化できるだろうか。

よく、そうした価格破壊は「悪」だということが、まことしやかに語られることがある。

しかし、「無料」は企業にとっても、必ずしも悪いことではない。

人々は、企業が商品・サービスを提供するために負担したコストに対して

お金を払うのではなく、払うべき理由(付加価値)を見つけてお金を払うのである。

そうした付加価値モデルにいち早く転身できれば、圧倒的に差別化されたビジネスモデルになる。



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