外資誘致の時代

外資誘致の時代

外資を日本に誘致する意味は何か。

平たく言えば、国・地域の経済発展を促進し、最終的には雇用創出等、日本人の生活を豊かにすることだ。

これを具体的に後押しするのが、外資誘致の政策であり、外務省なりJETROの担っている役割である。

しかし、日本における外資誘致は、一部を除き、概ねうまくいっていないのが正直なところだろう。

なぜだろうか。その根本に現状の政策のギャップがあると思う。

 

これまでの外資誘致は、“日本に”競争力があり、多くの労働者が必要で、かつ事業規模があって

税収が期待できる産業(自動車部品等の製造工場)一本槍の側面があった。

現在のグローバル環境において、今さらそのような誘致だけでは失敗も当然だろう。

その結果、地方の外資誘致向けの工業地帯には多くの「空き地」が散在している。

しかも、そうした政策誘致とは別のところで、ファンドを中心とした資本は着々と日本への投資を行っており、

統計的にもFDI(Foreign Direct Investment、対日直接投資)の額・件数ともに右肩上がりとなっている。

本書を読むと、JETRO担当者である著者が、こうした現状と政策のずれに危機感を持ち始めた様子を感じる。

 

著者は、本書冒頭の「激化する外資誘致競争」で、外資誘致のあるべき方向性について2つを提言している。

  1. M&Aも含めた外資規制の撤廃・緩和と、対日投資に対するインセンティブ・インフラの整備
  2. 産業振興ビジョンの策定と、投資のプロフェッショナルによる誘致活動

もちろん、これまでもインセンティブやインフラの整備はあったが、根底にある論理は“国・地域が企業を選ぶ”だった。

いわば、外資のために準備したルールからはみ出ないように活動して欲しいというスタンスである。

しかし著者は、こうした硬直したやり方から抜けて、“企業が国・地域を選ぶ”論理を受け入れるべきだと強調する。

資本の論理に対する表面的な吹き上がり(経営権を奪われた、自国の産業が侵食された)を超えて、

本質的な経済・社会効果の観点から誘致を評価できるか否かが、日本の企業誘致の成否を左右するだろう。

しかし、2009年現在においても、この2つの方向性は実現にほど遠いのが実態だ。

 

個人的な意見を言えば、“産業”を誘致するという切り口自体がナンセンス化したのではないかと思っている。

“どのような産業を誘致ことができるか”は、政策というよりマクロ的な経済構造によって限定される。

現在の中心誘致対象である製造工場を、新興国に対抗して日本にを誘致できるチャンスは相当に限定的だ。

一時期ブームになった研究機関誘致も、昨今の景況悪化を受けてさっさと退却してしまうほど、関係は薄い。

かといって、イギリスのような金融立国の方向性も、リーマンショックを受けて取りにくい選択肢になってしまった。

生産立国がダメ、技術・金融も答えにならないとすれば、“産業”単位で考える枠を取り払ってはどうか。

一方で、もしクラスター化を本気で進めるとすれば、まず国内に求心力となり得る産業リーダーを

育成することが優先ではないか。



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