政府はこうして国民を騙す

政府はこうして国民を騙す (現代ビジネスブック)

政治報道の裏を読むためのリテラシー

3.11の東京電力問題や、消費税引き上げ、小沢一郎と検察を巡る疑惑などのホットニュースの裏にある、 報じられない事実とは。東京新聞・中日新聞の論説委員である著者は、政府やメディアのデタラメを暴き、官僚が何を画策しているのか、国民が何を押し付けられようとしているのかを記者としての気概を込めて明らかにしていく。

現役官僚や担当大臣に直接取材をし、一般の報道と異なる事実がはっきりしていく様を目の当たりにしてもらいたい。しかし、この本の一番の価値は、報道を通して僕ら国民に物事の裏を読む視点を与えてくれる点にある。

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東電処理に隠された事実

例えば、東京電力の処理問題著者はまず、関係者の利害構造を整理するというオーソドックスな手法で、今般の処理方法に潜む根本的な問題を洗い出している。すなわち、保安院が経産省の下部組織であった点、東電が経産省の天下り先である点、事故調査委員が御用学者である点(調査委員は後に東電の取締役にスライド)などだ。こうした利益相反が生むプリンシパル(国民)=エージェント問題が存在する以上、どんなに議論を尽くしたところで、はじめから落としどころが見えているも同然だ。

そして、最も重大な点は、原子力損害賠償支援機構法の抜け穴についてだ。原子力損害賠償支援機構法の第68条には、回りくどいが堂々とこう書いてある。

政府は、著しく大規模な原子力損害の発生その他の事情に照らし、機構の業務を適正かつ確実に実施するために十分な負担金の額を定めるとしたならば、電気の安定供給その他の事業の円滑な運営に支障を来し、又は利用者に著しい負担を及ぼす過大な額の負担金を定めることとなり、国民生活及び国民経済に重大な支障を生ずるおそれがあると認められる場合に限り、機構に対し必要な資金を交付することができる。

著者が指摘している通り、要は東電の都合次第で返済を必要としない資金を注入できる方法が準備されているわけで、東電の利権構造を温存し、国民に負担をすり替えるものに他ならない。官僚の思惑を先読みし、法律の裏まで突っ込んで、はじめて実態が見えてくる。反対に言えば、政治家がどれだけ決断的な発言をしているかなどに拘泥しているようなマスメディアにはなにも見えないようになっているのだ。

 

メディアに対する内部批判

著者は、政府報道の垂れ流しを続け、自らの頭で戦うことを怠ってきたマスメディアに対し、痛烈な批判を浴びせている。しかし、正直なところ、情報のアンテナの高い人は既存のマスメディアの限界を、とうの昔に見限っている部分があると思う。今回の東電問題にせよ、そうした人はネット中心とした情報ソースで、自分なりの検証をしている。そうした状況において、著者の批判は今さら感が否めないが、それでも著者の批判に応え、クオリティメディアに生まれ変わるメディアがひとつでも増えれば、国民として嬉しいことだ。



“政府はこうして国民を騙す” への1件のコメント

  1. clb_webmaster より:

    著者が司会を務めるTOKYO MX「ニュース女子」(DHCシアター制作)が沖縄基地問題について事実に基づかない報道を行ったことに対し、著者は「言論の自由に対する侵害だ」という的外れな発言を行っている。本書の内容が否定されるものではないものの、非常に残念。ナゾの政府ヨイショ記事を書くようにもなっており、今後の作品には注意が必要。
    *事実に基づかない報道:沖縄の米軍基地に反対する人々について、金銭を受け取っているプロ・韓国人が反対運動を先導しているなどと事実を確認せず報道したこと(取材の過程では反対派の人々がいる場所にすら行っていない)
    *的外れな発言:言論の自由とは、国家に対して国民が保障される権利であって、国民同士において他者を侵害する行為を行っていいという権利では全くない(小学生でもわかること)

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