事業再生要諦

事業再生要諦―志と経営力‐日本再生の十年に向けて

2つの事業再生

事業再生の手法には、大きく分けて2種類ある。

ひとつは“外科手術”、例えば本業を阻害する過剰な債務や、NPVがマイナスのビジネスをリストラクチャリングする。

要は切ったり貼ったりの機械論的な発想で、迅速に行われる応急手術、蘇生措置である。

一般的には、弁護士・会計士・コンサルタントなどのアドバイザー(“ニワトリ型”)が入り、外部からバッサリと手をつける。

もうひとつは“内科治療”、つまり組織の意識改革やビジネスモデルの転換を通じて、中長期的な企業体力を回復させることである。

こちらの場合、精神的にもビジネススキル的にもリーダーとして旗を振れるプロ経営者(“ブタ型”)が求められる。

この2つの再生手法と人材が両輪となってこそ、本質的な事業再生は達成される。

 

プロ経営者のいない日本

しかし、日本において“ブタ型”の再生を実行できる人材は、残念ながら圧倒的に不足している。

不良債権ビジネスの成立以降、日本においても事業再生ビジネスが盛んになってきたことは間違いない。

ただし、日本の事業再生においては、銀行主導で債務カット、人員削減、事業撤退等を一通りして、スポンサーがいれば運がいいが、

そうでなければ他に事業ができる人もいないのでDIPファイナンスでお茶を濁すということが当たり前にまかり通っている。

これでは暫くすると当然また危機が訪れるのだが、そうするとまたモルヒネを打つか、諦めてお金を引き上げるかということになる

こんなことをしていては、日本の再生もへったくれもあったものではない。

求められているのは、ビジネスにおける本質的な再生、プロ経営者がコミットする形での内部変革にある。

著者はこうした日本の現状を憂い、“ブタ型”の事業再生におけるスキルと心構えを読者に本気で訴えている。

 

“販売”の再生

著者は“ブタ型”再生のキーワードとして、“販売”を取り上げている。

確かに、僕がM&Aアドバイザーとして事業再生の現場に赴くと、問題となっているのは大抵販売の問題である。

外科手術がひと段落したところで必ず問題になるのが、このままのビジネスモデルでは結局停滞してしまう、

何かビジネスモデルを変革しなければならないのだが、という漠然とした不安感なのである。

また、スポンサー獲得やメインバンクとの交渉においても、販売、つまり将来の成長性を当然求められる。

本書において、再生のテクニックとしてランチェスター法則や代理店政策が語られているのは意外な感じもするが、

再生企業が置かれた実態を踏まえると、販売がまさに急務の経営マターになっているのである。

そうした観点から、プロ経営者として販売を見る目(再生における営業戦略や時には実際に営業の指揮を執ること)の要諦が

本書ではしっかりカバーされている。

 

プロ経営者育成の方向性

日本で本流の“ニワトリ型”プロフェッショナルには、事業家として“儲ける”発想を求めるのは、どうしても限界がある。

再生におけるこのスキルのギャップが、プロ再生屋はいてもプロ経営者がいない大きな要因だと著者は指摘している。

日本においても、世界で最も成功しているファンドのブラックストーンや、再生のプロ組織アリックスパートナーズのような

企業を本質的に元気にするビジネスを意識的に育成していかなければならない。

そうした問題意識を、本書からバトンのように受け取った気がした。

そのために、僕自身としては経営コンサルタントとして、本来のエージェント的立場を超えて、“ブタ型”のサービスに

踏み込んで挑戦する(ある種、経営コンサルタントを脱する)形で貢献していきたいと考えている。

あなたは、この日本の課題についてどう関わっていける可能性があるだろうか。



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