組織戦略の考え方

組織戦略の考え方―企業経営の健全性のために (ちくま新書)

組織論のベーシックフレームワークをしっかり学べる

あなたの会社では、組織改正がここ1~2年の間に何度行われただろうか。

組織は顧客ニーズや技術などの外部環境の変化によって、古くなることが運命づけられている。

そこで多くの会社では、カンパニー制にしてみたり、階層の数を減らしてフラットにしてみたりする。

組織が廃れるスピードの速い現代では、組織改革が繰り返され、趣向を凝らした組織形態も出てくる。

しかし、例えばフラット型の組織を採用して成功した組織はどれほど存在するだろうか。

僕は、この点に非常に懐疑的である。

流行のフラット型組織は、著者も指摘するように、個々人が意思決定することを前提に階層を減らす。

だから、個々人に意思決定の経験やスキルがなければ、意思決定を求めても、

結局は報・連・相の相手を捜してさ迷うのがオチである。

このように組織設計は、白紙から考えるものではなく、既存組織の指揮系統や能力が大前提となる。

著者は、この点を踏まえ、カタカナ組織論を避け、「組織とは何か」を基礎の基礎から論ずることで、

実際によくありがちな組織設計の難点・要点を、どこまでも実態に即してまとめている。

僕の所属するファームでも本書をお勧めする人が多く、学術的かつ実践的な面白い本である。

なぜか頻繁に組織が改正される会社の方、これまでの組織改正に懲りている方に特にお勧めしたい。

 

組織の2大フレームワーク:官僚組織と例外機構

著者が組織設計の要に位置づけているのは、官僚組織に対する理解である。

お役所的な官僚組織を、「官僚制の基本モデルを欠いた組織など存続し得ない」とまで言う理由は何か。

官僚組織とは、上下の指揮関係と、その運用ルールがきちんと整備された組織である(軍隊が典型)。

つまり、ある問題は解決すべき人にきちんとエスカレーションされ、漏れなくダブりなく処理が行われる。

このアタリマエがあってこそ、その上に創造性や戦略性は発揮される。

もちろん、プログラムで対応できない例外は、「ヒエラルキーによってその都度上司たちが考えて処理する」。

僕たちがイメージする官僚組織は、指揮関係やルールにこうした「必要な例外」がない硬直的な組織だが、

このような腐敗を防止する手立てを考えることが、組織設計における2番目の論点である。

例外処理のための組織的工夫として、著者は5つの点をまとめている。

冒頭で紹介したカンパニー制やフラット型組織は、これらの類型だ。

 

組織病の典型

官僚組織・例外機構の2つが機能不全に陥ったとき、組織はどうなるのか。

著者は、フリーライダー、トラの威を借るキツネの権力、バランス感覚のある宦官、

利益を稼ぐ戦士の減少など、的確なキャッチフレーズで典型的な組織病を解説している。

あなたの組織には、こういった症状は現れていないだろうか。

これらに当てはまるところがあれば、組織の基礎構造を見直す時期に来ていると言えよう。

最後にひとつだけ注意。

本書を楽しく読んでいると、「そうそう、ウチで言えば悪者はあいつだよね」と、

自分のことは棚に上げて、近くの他人を気取ってしまいやすい。

当事者意識を持って読めば良薬に、傍観者を気取れば格好の言い訳材料にしか

ならないことは常に念頭に置いて読むことが大切だ。

 



この本についてひとこと