HPウェイ シリコンバレーの夜明け

HPウェイ[増補版] The HP Way: How Bill Hewlett and I Built Our Company (Collins Business Essentials)

ベンチャーストーリーを追体験する

今をときめくアメリカのテクノロジー企業の多くは、小さなガレージから始まった。

今や売上が$120 billionを超えるHewlett-Packard(HP)も、スタンフォード大学の同級生だったビル・ヒューレットとデービッド・パッカードという若者2人が1939年にガレージで立ち上げた小さな機器メーカーに過ぎなかった。彼らが創業した当時は、まだまだパソコンが普及する前の時代だったが、2人の強い熱意とパートナーシップは、後にカリフォルニア州パロアルトを、一大ハイテクシティ、シリコンバレーに発展させる原動力のひとつとなる。

デイブが記したこの自伝は、HPの立ち上げから、揺籃期の苦労の日々、そして今もウェイを守り続けるHPの現在までが克明に描かれた、シリコンバレーのベンチャーストーリーのリアルを知る貴重な記録である。ちなみに、創業からの歴史をざっと眺めたい方は、HPのwebsiteに詳しい紹介がある。

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信頼にもとづくHPならではのWAY

HPのDNAである「HP WAY」を特徴づけるのは、仲間に対する信頼と、信頼にもとづく組織作りだ。創業者の2人は、徴兵による事業ストップや1990年代の業績低迷など、困難を共に乗り越えてきた。この体験をもとに、仲間の助け合いと成長を組織文化の根本に据えたのである。

HPはこの理念に基づき、WAYを明文化し、幹部に対して共有を徹底し続けている。本書で紹介されている1966年時点のWAYは、大きく7つにまとめられているが、企業の存続と、そこで働く仲間への思いをうまくバランスさせた、HPらしいWAYになっているのが分かる。

 

チャレンジを呼び込む組織作り

信頼に基づく組織作りは、HPの人事制度として明確に取り入れられている。デイブは、「利益は再投資し、長期的な借入には頼らないようにしようと決めていた」と語っている。ウォール街の金融業界ように短期的に利益が見込める事業に次々と手を出すことはせず、WAYを実現するのに適切な事業に対して資金を投下し、仲間がチャレンジしたくなる場を作っていく。そして、チャレンジした人に対しては、熱意の帽子、調査の帽子、決定の帽子という「3つの帽子」で熱意を褒め称え、透明性の高いプロセスで評価されるよう、仕組みづくられている。こうした一人ひとりのチャレンジを信じることが遠回りに見えても価値を生むと理解しているからだ。

 

価値観をベースとした行動規範

こんな実例がある。HPの日本子会社(現日本HP)のマネジメントは、米本社出身者が担当していた。ある時、日本人の担当者が現地管理の効率化を訴え出たところ、一般的な海外支社には珍しく、HP本社は日本人トップを許可した。そして、その結果、効率性が高まったのを知ったHPは、日本のやり方をなんと本部にも取り入れ、本部の効率も上げてしまったという。一見当たり前だが、一般的なガバナンスとしてはなかなか実現できない信頼のイノベーションだ。

あなたの会社は、こんな風な明文化され、文化として浸透した行動規範(Discipline)はあるだろうか。簡単にまねできることではないが、経営の進路に迷いが生まれやすい今だからこそ、惰性的なモメンタムやセクショナリズムなどのしがらみに負けない座標軸が重要なはずだ。



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