アイデアをカタチにする仕事術

アイデアをカタチにする仕事術

本書の著者は、チェッカーズ、おニャン子クラブ、だんご3兄弟などの

国民的ヒットを手がけたメディア・プロデューサーである。

そんな彼が本書で手がけたのは、「ヒットを生み出す仕組みを解明しよう」ということだ。

当たり外れが大きく、予測のつきにくいコンテンツ業界で、ヒットを生むために

必要なプロデューサーとしてのケイパビリティを定義してしまおうというのだから、興味深い。

そのケイパビリティを考える上で重要なキーワードは、「ビジョニング」だ。

 

よいビジョニング、わるいビジョニング

ビジョニングとは、グループが共有すべき目標を明確化し、進むべき方向を一致させるために、

まだそこにないものをイメージし、具体的な道筋を表現することで、グループの舵取りをする能力である。

例えば、ウォルト・ディズニーは、「すべての大人と子供が一緒に楽しむことができる遊園地」という

直解できるビジョンを発信し、周りの協力者たちを巻き込むことで、誰も見たことのないような

テーマパークを創設することができたと言われている

(ちなみに、東京ディズニー・シー創設の物語も、経営者のビジョニングによるところが大きい)。

ビジョニング自体は一般的に浸透し、政治家や経営者がビジョンを熱心に語る姿も日常的となった感がある。

しかし、受け手である僕たちに道筋を示すような、心を動かす明快なビジョニングはまれである。

僕の関わった某大企業は、経営者が方針を打ち出したが、キーワードの発信に留まり、

どうやってそれを実現すればいいかの道筋がイメージできず、現場は思考停止に陥ってしまった。

皆さんの身の回りでも、同じような機能不全のビジョニングが堂々と行われていないだろうか。

では、「よい」ビジョニングと「わるい」ビジョニングを分けるものは何だろうか。

 

ビジョニングに求められるケイパビリティ

著者はビジョニング(本書では「プロデュース」と呼ぶ)の構成要素として、次の3つを挙げている。

重要なのは、プロデュースには<創造>から<実現>までの一連のステップが求められるということだ。

著者は、プロデュースに必要な能力を7つに整理し、各能力の具体例や訓練方法を解説している。

 

具体化思考の重要性

事業のタネを見つける「発見力」、個々人を集団にまとめ上げる「働きかけ力」、

事業をひと回り大きな物語につなげる「完結力」など、ひとつひとつの要素に分解されると

どんな能力が求められているのかが、よく伝わってくる。

特に注目したのは、定性・定量の両面から、自分のありたい姿を具体的に描く「目標力」。

物事を抽象化し、構造化するMBA的思考が人気を博しているが、

それと同時に、とことん具体的に考える力があるかどうかが、実は思考力の差だと思う。

意味論のS.I.ハヤカワは、これを「抽象のハシゴ」を上り下りすると表現したが、

まさに、抽象化だけでなく具体化の方向にも思考を下っていけることが、

プロデューサーとして物事を見通すために求められる力だと思う。



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