広告入門

広告入門 (日経文庫 E 28)

広告業界への入門書

広告は手を替え品を替え、時代にあわせて形を変化させている。いわゆる広告“枠”として目に見えるポスター(OOH)やチラシ、TVCMだけでなく、プロダクトプレースメントやインフォマーシャルのようにコンテンツと融合したものまで。「広告」と一口に言っても、これを定義するだけで奥深い世界がある。

本書は、そうした広告業界への入門書として最初に手にとるには最適な1冊だ。マーケティング理論としての広告に留まらず、広告業界におけるプレーヤーの動向や、広告マンとしての仕事のイメージまで、この1冊で広告業界についてひと通り詳しくなれる。

ちなみに、目次で見るとこのような構成になっている。

1章:広告とは何か
2章:広告主の活動
3章:広告会社の役割
4章:広告メディア
5章:企業戦略と広告
6章:広告計画の策定と実行
7章:広告規制
補章:広告学の歩み

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理論としての広告

本書では、まず広告とは何かを理論的に分かりやすく解説している。著者は、広告が本質的にコミュニケーションツールであることに着目し、広告の種類を分解する。ひとつの軸としては、認知(cognitive)→感情(affective)→能動(conative)やDAGMAR、近年のAIDMA・AISASに代表される、コミュニケーションのステップごとに分けるやり方である。つまり、認知させるマス広告、感情を喚起する体験イベント、能動を引き出す店頭プロモーションなど、消費者にどう動いてほしいかのフェーズによって広告の姿が変わるわけだ。

もうひとつの軸としては、消費者ニーズの攻め方によっても広告のあり方を分けることができる。このように考えると、広告をどのように定義するかはまさに事業戦略の一部であることがよく分かる。

更に複雑なマーケティング手法として、様々な広告の組み合わせ方(広告計画)が開発されている。例えば、消費者の購買動機のグラデーション(ムラ)に対応した次のようなアプローチもある。

また、個人的に特に興味深かったアプローチとしては次のような3つの戦略がある。

 

ビジネスとしての広告

広告業界における各プレーヤーの動向や広告ビジネスの仕組みについても詳しく紹介されており、広告業界で仕事をしたい方や広告業界の調査をする上で役立つ基礎知識がまとまっている。まず、広告業界を俯瞰する上では、広告機能別のプレーヤー群を理解することが必要だ。例えば、広告枠の仕入・販売、広告の企画・制作、広告の運用(主にWeb)、広告データシステム等。デジタル化によって更に進んだ機能分化を踏まえて作られた業界のカオスマップがよく知られている。

いわゆる総合広告代理店に絞って更に深掘ってみると、主な機能には以下の4つがある。

大雑把に言えば、総合広告代理店はこれらの総合的な付加価値に対し、広告枠の仕入額に15%のコミッションをのせて広告主に請求するのが基本のビジネスモデルだ。最近では、コンサルティング型のフィーモデルや、成果連動型の報酬体系なども取り組まれているが、トラディショナルな代理店は、コミッションモデルからの脱却をまだまだ模索している段階だ

その他にも、本書では各メディアのPros/Consが端的にまとめられていたり、CI(コーポレート・アイデンティティ)のような、全社レベルのブランディング手法、JARO(日本広告審査機構)を中心とした自主規制と法規制など、広告業界についての基礎情報が幅広く紹介されており、非常に役に立つ。



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