13歳のハローワーク

13歳のハローワーク

あなたが思い浮かべる“勝ち組”、“成功”は、どんなイメージだろうか。

これまで最も確実に“成功”にありつく方法は、東大法学部を出て省庁や東証1部上場の大企業に入ることだった。

もちろん、このコースは今でも機能している(と信じられている)が、昨今の社会・経済情勢を鑑みると、

「蜘蛛の糸」のようにいつ千切れるとも分からないというのは、口に出さなくてもの誰もが感じているところだ。

もし糸が千切れてしまうと、彼らは既存システムに適応するほど、かえって不利な立場に追いやられるだろう。

しかし、今の日本では他の成功モデルを描くことができないため、糸にしがみつくのも止む無しというのも現状だ。

僕が参加したセミナーで、村上龍も同趣旨のことを語っていた。

 

彼は、こうした現状に対するアンチテーゼとして、『希望の国のエクソダス』という小説を書いた。

この物語の中では、既に分かり易い“勝ち組”コースは崩壊している。

現実に敏感な子供たちは、“生き残り”“サバイバル”という差し迫った現実を前に、

インターネットビジネスや手に職系の資格や技術など、生きる糧を嗅ぎ分け、独自の“成功”を築こうと足掻いていく。

村上龍のメッセージは、子供たちのこうした“必死さ”こそ、これからを生きる僕らが学ぶべきだということだ。

自ら“成功”モデルを勝ち取っていくモチベーションは、“何となく”“うまい話”に乗っかる軟弱さとは決定的に異なる。

彼はこうしたモチベーションを“飢え”と呼んでいる。

そして、“飢え”るきっかけを現実の子供たちに与えるため、新しい職業紹介の本を書いたのである。

 

したがって、紹介されている職業も、いわゆる今の親が喜びそうなステレオタイプなものだけでなく、

これからを生き延びるのに有利だと思われるものは、幅広く取り上げている。

かつ、職業の分類の仕方は、“飢え”のきっかけとして子供たちの“好き”を大切にするために、

例えば「花や植物が好き」、「ナイフが好き」、「エッチなことが好き」など、独自の視点で職業を取り上げている。

また、面白いのは給与等の待遇面についてもメリット・デメリットを洗いざらい示すことで、

どこまでも現実感のある意思決定の場を提供しようとしているところである。

小さい頃から現実に目を向ける、また親も子供が大人になる頃の現実を想像するためのチャレンジだ。

 

本書が出版されたときの13歳は、今ちょうど大学生くらいだろうか。

彼ら彼女らが社会に出るのはほんの数年後だが、その時、日本がどうなっているかを予想することすら難しい。

未だ従来の“成功”モデルを信じている人でさえ、それを支える日本の構造が継続するとは言い切れないだろう。

であるならば、タービュラントな状況を乗り切る鍵は、決して職業のステータス的・見栄的な優越ではない。

重要なのは、その職業が沈まぬ船なのか否かの冷徹な見極めと、偏執狂的にのめり込む“飢え”の心である。

そして、そうした危機意識を強迫観念的に植えつける場に、たくさん巡りあうことである。



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