世界がわかる理系の名著

世界がわかる理系の名著 (文春新書)

名著、読んでますか?

最新!、サルでも分かる!、5分で学べる!・・・・・。

書店に行くと、こうした新しさや分かりやすさを売りにした泡沫的書籍が所狭しと並んでいる。

もちろん、限られた時間でトレンドをキャッチアップしたり、難しいことを噛み砕かれた言葉で

理解するための手助けとして、これらの本は非常に重宝する。

しかし、最新のトレンドや分かりやすさを追いかけているだけでは、それらの背景にある、

より根本的で抽象度の高いメカニズムに対する理解には決して到達できないのも事実だ。

とはいえ、古典の「名著」と言われても、どうせ読んでも分からないのではないか。

本書は、そんなジレンマを感じている方にうってつけの1冊だ。

京大の名物教授である著者が、理系の分野における様々な名著を取り上げながら、

これらの誰でも一度は名前を聞いたことのある古典が、

いかに世の中に影響を与え続けている”革命的”な書物であるかを教えてくれる。

 

パラダイムシフトの苦しみ

名著を一つひとつ丁寧に解説した文章を辿ると、名著には名著たる所以があるように感じた。

第1に、そこに記された理論や概念は、世間に認められるまで、様々な苦難を経ていること。

例えば、地動説や進化論が出てきたタイミングというのは、世の中の問題の多くが

これまでの枠組み(パラダイム)が十分な説得力を持っていて、

新しい理論が革新的であればあるほど、信憑性が低く、異端な理論だと捉えられがちである。

逆に言えば、パラダイムシフトのきっかけを掴むには、「二つの現実的に対立する理論の

どちらが事実によりよく適合するか」を見つめ続ける辛抱強さが一つの条件になるのだろう。

 

シンプルに研ぎ澄まされたモデル

第2は、名著で示される理論や概念は、時に平易すぎるほどにシンプルなものだということ。

例えば、自然選択が進化を導くダーウィンの進化論モデルや、

A・aで遺伝のシステムを可視化したメンデルの遺伝形質モデル、

人間・犬・ハエそれぞれの目線で見た世界をイラストを交えたユクスキュルの環世界モデルなど、

ロジックとして強固でありながら、誰の目から見ても明らかなシンプルさでモデルが提示されている。

シンプル化することで見えてくる本質には、非常に強い普遍的なメッセージが宿るものである。

以上の2つが名著の面白さとして僕が受け取ったことだ。

 

現代における古典の意味

名著の紹介文は、5つの項目をテンプレートにしてまとめられている。

①書いたのはこんな人
②こんなことが書いてある
③その後、世界はどう変ったか、
④エピソード
⑤○○(古典の著者)の教訓

①・②は本の紹介の常だが、③~⑤は僕たちにとってどのような意味を持つのか、

何を引き継いでいくべきかという、“今”を起点にしたメッセージになっている。

「理系の名著」などというタイトルだけ見ると、今さら読む気が起きにくいかもしれないが、

そういう視点で描かれているからこそ、読み出すとやめられなくなる。

著者が京大で行っている講義が常に人気だということも非常に頷ける気がした。



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