マンキュー マクロ経済学Ⅰ入門編

マンキュー マクロ経済学(第3版)Ⅰ 入門編 Macroeconomics

日本が直面する経済問題を根本から理解したい方へ

昨今、TPPの内国経済に対する影響や、アベノミクスの柱である金融政策(リフレ政策)の是非など、経済学を巡る議論が国家的なイシューとしてこれまでに増してホットな領域になっている。成熟国である日本においては、こうしたイシューは必ずしも政治レベルの問題にとどまらず、僕らひとりひとりにとっても、具体的な生活を大きく左右するテーマとして、重大な関心事となっている。

しかし、こうしたオンゴーイングのイシューに対し、僕らはどれほど理解し、判断を下せているだろうか。実際、TPPやアベノミクスについて解説したTVプログラムや新書の類は数知れない一方で、より根本的な経済のメカニズムを理解するレベルには到底及ばないシロモノが多い。かといって、リフレ賛成反対論者の著作にいきなり当たるのは、素人にはハードルが高い。

そんな問題意識から、僕は腹を決めて経済学の理論をもう一度自分で学び直そうと決めた。本書は、そうした問題意識を持つ読者には、間違いなくうってつけの1冊だと言える。

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一流経済学者が教える、素人でも分かるマクロ経済学

経済学の泰斗で、アメリカの金融・財政政策にも関与するハーバード大学教授のマンキューが著者となると、あたかも初学者には難しいように思われるが、実際は全く正反対である。マクロ経済学の基本理論を一通りカバーする本格的な内容でありながらも、説明が丁寧で分かりやすく、時事的なトピックを題材にしたコラムも、経済学理論と現実問題をつないで理解を促進させてくれる。

例えば経済学で初めに習うGDPをとっても、実際にどう集計され、どこに限界があるのかに踏み込んだり、一見とっつきにくい貨幣数量説やIS-LM曲線(リフレ論議の基礎となっている)についても、モデルを構成する各要素が変動するとどう変化が起きるのかをステップ・バイ・ステップで解説した上で、各国の実績データをもとに、これらのモデルが現実にどう作用しているかを示してくれている。

大学で経済学を習って以来、入門書をいくつか読んできたが、少々値が張るところに目をつぶれば、個人的には本書(上巻だけでも十分)があれば、他の入門書に浮気する必要性は感じられない出来だ。

 

マクロ経済学から学ぶ経済を理解する基本フレームワーク

マクロ経済学の良いところは、その国における経済の均衡点や景気変動の帰趨を大局的観点から見極める術(フレームワーク)を提供してくれるところにある。もちろん、あくまでフレームワークであり、極端な前提を置いている点で現実離れしているが、著者も本書で述べているように、いくつかの極端なフレームワークを組み合わせることで、現実の出来事をうまく読み解くことができる。これがマクロ経済学の価値である。

ここでは、フレームワークとして代表的なものを、さわりとしていくつか簡単に紹介しておきたい。

 

古典派理論(経済の長期的な均衡点を見極める)

財・サービス(または貸付資金)の需要と供給を、価格と金利が均衡させるメカニズムを表す理論。完全競争、かつ合理的経済人を前提とし、もっともシンプルにマクロ経済の仕組みを描く。

ごく単純に言えば、貨幣のトランザクション総量と経済規模とが一致することに基づく理論。“貨幣(M)×流通速度(V)=価格(P)×取引数(T)”で表され、これらの変数のうち、短期的に変動しづらいT(≒生産量(Y))と、Vを一定と仮定すると、MこそがPを決定づける変数になる。

ある国が世界市場において、資金の貸し手・借り手、貿易黒字・赤字のどちらになるのか、また一国の政策が世界市場にどう影響を与え得るかを、利子率と為替レートから読み解く理論。利子率が世界水準に決まる小国開放経済と、世界に影響力を持つ大国開放経済の2つのモデルを用いる。

失業を、自然失業・摩擦的失業・構造的失業に分解し、それぞれのコーザリティを分析する。政策的に受け入れるべき失業率水準や、失業要因に適した失業対策の特定に役立てる。

 

景気循環理論(短期的な景気変動の帰趨と対策を見極める)

古典派理論と違い、短期において価格が硬直性を有する現実を踏まえた需要・供給モデル。したがって、硬直した価格水準に適用するため、長期総供給曲線が垂直になるのとは反対に、短期総供給曲線は極端には水平になる。このモデルをもとに、総需要・総供給それぞれにショックが起きた場合のレスポンス、及び適切な経済政策の方向性を明らかにする。

所得・生産水準と利子率とが、投資と貯蓄とどのようにバランスするかを読み解くIS曲線と、流動性と貨幣とどのようにバランスするかを読み解くLM曲線から成る。各変数が変化したときに、次にどの変数が動き、それが更に他の変数にどう影響を及ぼすかを両曲線の動きから理解することができる。



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