MEDIA MAKERS 社会が動く「影響力」の正体

MEDIA MAKERS―社会が動く「影響力」の正体

メディアのプロが語るこれからのメディア・リテラシー

本書の著者は、リクルートのR25からlivedoorニュース、GQやワイヤード、そして現在はLINEと、多種多様なメディアの立ち上げ、マネタイズを統括してきた田端信太郎だ。彼の経歴を見ると、本書は新しいメディアの生態をテーマにしていそうに思われるかもしれないが、ニューメディアがオールドメディアに与える影響は踏まえつつも、メディア全体の役割に目を向け、その中で各メディアがどんな戦略ポジションを築き得るかを論じる“硬派”なメディア論になっている。

デジタル化・ソーシャル化に表層的に対応するだけでなく、社会とメディア・ツールの変化が齎したユーザーのメディア受容態度の変化を正しく理解し、そうしたユーザーの態度とどう向き合うのか。本書を読めば、これまで見えなかった新たなポジションのあり方について、ヒントが得られるはずだ。前半が“メディアに共通する3つの価値”、後半が“メディアの性質を決める3つのフレーム”で構成される。

 

メディアに共通する3つの価値

前半で語られるのは、どんなメディアにも共通して求められるメディアの存在価値に関する議論だ。著者は、メディアの存在価値を大きく3つに括って分析している。

1つめは、自明のことだがメディアの価値はあくまで受け手が決めるということだ。情報の発信手法や編集技術が発展した昨今だからこそ、この点は強調してもし過ぎることはない。

2つめは、メディアが自らの予言を自己実現してしまう性質を持っていることに起因する。例えば、ある会社が倒産間近と報じられたら、事実でなくても倒産してしまうことがあり得る。反対に言えば、こうしたリスクをメディアが自覚するところに信頼やブランドが生まれる。

3つめは、メディアという観察者がいて、はじめて存在が客観的に記録されるということ。観察者と被観察者の相補関係が成り立つような組み方に目を向けることが重要になる。

これら3つのうち、特に2つめと競争優位性との関係、3つめとアライアンス論とのつながりは、メディア戦略を検討する上で広がりを作る視点として重要だと思う。

 

3次元マトリクスで読み解くメディア・ポジショニング

後半では、個別のメディアの観点から、どのようにメディアを特徴づけ、差別化すべきかについて、3つのポジショニング軸を設定して、明快に論じられている。

ストックとは賞味期限の長いコンテンツ、フローは鮮度命のコンテンツを指す。例えば、古典的名著ならストック、ニュースならフローといった具合だ。ここでのポイントは、ストック的情報でも、フロー的情報でも、「閲覧TPO」を捉え直し、編集し直すことで、新たな情報発信の可能性が創出できる点(例:Togetter)である。

参加性と権威性は、コントロールの程度とそれに伴う責任の所在に関するポジショニング軸だ。参加性メディアは、ユーザーに権限が相当程度委譲されるため、良くも悪くも偶発性が高まる。運営側は、場を醸成し、責任範囲を明確化することで、信頼を築くことが重要になる。一方の権威性メディアは、運営者の信頼性・カリスマ性がメディアの価値を左右する。堀江貴文のメルマガのような「個人型メディア」がこれに当たり、責任が個人に帰される反面、課金できるほどの信頼性を築ける可能性を秘めている。

リニアは、頭から順にコンテンツの作り手が意図した通りに受容するコンテンツ。ノンリニアは、ユーザー側が好きなようにつまみ食いすることができるコンテンツを指す。一般に、時間の細切れ化によって、マイクロ・コンテンツがユーザーに好まれる傾向がある昨今では、フロー⇔ストックの議論に加え、時間の観点から「閲覧TPO」を考えることの重要性が高まっている。

 

アーキテクチャを味方につける

著者が全体を通して強調しているのは、「アーキテクチャによる支配」に敏感であれということだ。コンテンツ製作者としては、コンテンツの質にどうしても拘りたくなるものだが、コンテンツの質を1高める以上に、アーキテクチャへの対応を10高める方が、実はコンテンツの価値をより効率的に高めることにつながったりする。アーキテクチャの特性を正確に把握し、味方につけたものには大きな可能性が広がる。

コンサルタントの間には「マトリクスで遊ぶ」という言葉があるが、「閲覧TPO」の観点から3次元のポジショニング・マトリクス上を自在に行き来する柔軟な視点こそが、次世代のメディア・リテラシーなのだ。



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