相棒 season 1

相棒 season1

いい意味で裏切られた予想

僕は、個人的にノベライズ小説というものがあまり好きでない。

おしなべて言えば、元となっているドラマや映画を見る以上には面白くはないというのが相場だからだ。

しかし、少なくともこの「相棒」シリーズに限っては、そうした予想を裏切ってくれた。

水谷豊演じる杉下右京、寺脇康文演じる亀山薫をはじめ、彼らの表情・振る舞いが丁寧に表現され、

それでいてドラマのコピーに終わらず、ミステリ小説としてそれ自体でしっかり楽しめる。

よくよく確認すると、ノベライズで筆を執った碇卯人なる人物は、ミステリ小説「観察者シリーズ」で

横溝正史ミステリ大賞優秀賞を受賞した鳥飼否宇というではないか。

ドラマをもう一度味わいたい「相棒」ファンのみならず、ミステリファンにもおススメしたい。

 

杉下右京の秘密

本書には、今や懐かしい、亀山薫が相棒を務めた「相棒」シーズン1の全12話が収録されている。

今や「相棒」は、杉下右京の推理劇に留まらず、映画「X DAY」のようなスピンオフ作品も生まれ、

話がずいぶんと広がってきたが、そもそもエリート警察官僚の杉下右京が、

なぜ特命係という閑職にいるか、あなたはご存じだろうか。

警察内部の不正に立ち向かい、「解決済」の事件にも首を突っ込む彼らしい物語も面白かったが、

杉下が何者かに狙撃されて始まる、最終話の「特命係、最後の事件」で明らかになっていく

15年前の秘密には、ドラマで一度見ている僕も、改めてドキドキさせられた。

杉下が15年前に担当し、後に杉下をして特命係に配属させることになる“ある事件”とは?

その時、小野田官房長と杉下警部の間に何があったのか?

 

物語としての「相棒」の深み

ノベライズ小説を読んで、なぜ「相棒」にこんなにハマるのか、改めて考えさせられた。

僕が一番に思い当たるのは、酸いも甘いも了解した上でそれでも貫く“正義”への共感だ。

いや、ぼくは目的が手段を正当化するとは思えませんね。それは詭弁です。
平等であるべき法の下で、人は自分の犯した罪を償わなければならない。

杉下右京は、時に相手の癪に障るほどの合理主義者だが、彼のセリフには、単に合理的な

正しい/正しくないの判断以上に、“正しい”ことを貫こうとする覚悟が滲み出ているように思う。

だからこそ、真実を暴いても誰の得にもならない状況であったとしても、必ず真実に向き合おうとする。

また、「相棒」でよく取り上げられる、テロ特措法、陪審員制度、原子力発電など、

まだまだ賛否意見が分かれる時事問題に対しても、現行施策が必要とされた背景に耳を傾けつつ、

たとえ最大多数の最大幸福が得られるものだったとしても、そこに一部の人が不当に虐げられる

構造があれば、杉下は断固として許さない。

この杉下の覚悟こそが、見る者の胸に刺さるのではないだろうか。



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