DES活用の実務Q&A

DES活用の実務Q&A―債務の株式化 その仕組みと会計・税務

DES(Debt Equity Swap)とは

DES(Debt Equity Swap)は、その名の通り、債務(Debt)を資本(Equity)へ転換する手法のことである。

よくあるケースとしては、現状の債務者の経営状態のままでは債権の回収が難しいと債権者が判断した場合、

一部の債権については放棄を行いながら、残りの債権を債務者の発行する新株と交換する。

この処理で、経営状態の悪化している債務企業にとっては、弁済負担と金利負担が軽減されるメリットがあり、

債権者にとっても、債務企業の業績が将来アップサイドに働けば、より大きなリターンを期待できる。

このように、DESは企業再生の手法としてWin-Winになり得る構造を作る重要な機能を担っており、

企業再生に関与する上で、その仕組みを知っておくことの意味は大きい。

本書は3部で構成されており、基礎編・実務事例編で、DESについて具体的な取引を想定しながら学ぶことができる。

理論編では、税務・会計上の論点等、実務になると突き当たり易い論点が丁寧に解説されており、

事業会社の財務担当の方などの痒いところに手が届く、親切なつくりになっている。

 

DESにおける会計・税務上の留意点

DESを行う上で、留意すべき代表的なポイントがいくつかある。

特に大事になりやすいのは、会計・税務上の損益がどの程度発生するかに関するイシューである。

本書は、この点について実務事例も交えながら、網羅的に論じている。

特に代表的な論点は、非適格組織再編による債務者の“債務消滅益”および債権者の“債権譲渡損益”である。

いずれも、一般的なDESの形態である現物出資型で、組織再編税制上の非適格取引にあたる(現物出資型のDESは

事業の移転を伴わないため、基本的に非適格になる)という、よくあるシチュエーションでの論点である。

債務者の“債務消滅益”とは、現物出資の対象となる債権の時価が額面金額に満たない場合の差分を指す。

再生局面にある企業であれば、一般的には“債務消滅益”が立ってしまうのが自然だろう。

この場合、“益”に対応する“損”(損失や青色欠損金、期限切れ欠損金等)を検討することが重要となる。

一方、債権者の“債権譲渡損益”とは、対象債権の時価と債権者における同債券の帳簿価額との差分を指す。

こちらは、債権者のB/S上の話なので、“債務消滅益”の発生有無とは関係なく、検討すべき論点である。

これらは、そもそもDESを実施することの経済合理性が引っくり返る可能性を秘めているので、

常にセンシティブにならなければいけないポイントになってくる。

 

DESにおけるビジネス上の留意点

一方で、当然ながらDESは“実行したら終わり”ではないので、DES実施後のポイントにも留意が必要だ。

こちらについては本書の範疇外だが、個人的に気になる2つの論点を備忘として挙げておく。

まず、DESによって当然ながら“債権者”は“出資者”に衣替えする。

このことは、先に述べたように、出資者が債務者の再生に対してコミットする利害構造を創り出し、

両社のWin-Winの関係に発展するきっかけになり得るが、一方で、出資者からの過剰なモニタリングによって、

債務企業がかえって経営しにくい状況を生み出すリスクもある。

この点、DES以降の経営で何を目指すのかを協議し、具体的な数値目標やロードマップ、モニタリング指針を

出資者・債務者間で事前に握っておくことが重要になる。

次いで、資本(Equity)の特性として株式を時価評価する必要があるため、再生が失敗した場合には、

出資者は株式の含み損を抱えることにより、出資者自身の財務内容の悪化につながるリスクがある。

リスクの解消にあたっては、DESを実施する当初において再生の可能性を見極める“審査”の目が欠かせない。

 

統合的な視点の重要性

以上のように、DESは会計・税務、ビジネス、更には法務の観点も含めた総合格闘技である。

これらの視点を統合的に考えるスキルがないと、各ステークホルダーを納得に導くのが難しいのだ。

そう考えると、DESの実行はなかなかハードルが高いものである。

反対に言えば、DESを学ぶ際には、そうした統合的な視点や、各種専門家のチームをオーガナイズできる

視点を身につけることをゴールにおいて取り組む必要があると感じている。



この本についてひとこと