税効果会計の経理入門

税効果会計の経理入門(第4版)

税効果会計の重要性

2010年3月期から任意適用、2015年または2016年からは強制適用の可能性がある国際財務報告基準(IFRS)をにらみ、

コンサルティング業界においても、関連ソリューションに対するニーズが高まっている。

IFRS適用以前においても、日本の会計基準は段階的に改正(コンバージェンス)されていることは周知の通りであるが、

これにより、(PLベースではなく)バランスシートの公正価値を測定する統一の物差しが揃いつつある。

IFRSという物差しに従うことは、日常的な事業を正確にモニタリングする上で有効なことであると同時に、

M&Aアドバイザーの立場からすると、経営における重要な経営ツールであるM&A・組織再編を健全化するためにも大切なことである。

IFRSは、企業価値を毀損させる取引を抑制し、バリューアップに自信のある買い手にベストオファーを促す要素となり得るからだ。

その意味で、IFRSのポイントのひとつである税効果会計は、経理マターに止まらない重要なマネジメントスキルなのである。

 

税効果会計とは

本書は、前半で税効果会計の考え方、後半で会計実務のステップを平易に記述しており、実務書としてお薦めの1冊である。

税効果会計というと、税務の内容を会計に持ち込むため、会計に馴染みがある方でも苦手意識を感じやすい分野である。

もちろん、税務の知識まで突っ込んで理解すればベストだが、インパクトの大きいツボを押さえることが先決だ。

税効果会計のツボは、税務と会計における収益・費用(益金・損金)の“認識範囲”と“タイミング”の違いだと思う。

この点をイメージしていただくため、まずは基本となる概念を紹介しておこう。

まず会計上、法人税・住民税および事業税は、PLの税引前純利益に実効税率を乗じて算出される。

一方、税務的には①そもそも収益・費用と認識しない、もしくは②その期の収益・費用と認識しないことを理由に、

税務上の課税ベースは会計上のそれと異なったものとなる(益金・損金(税務)≠純利益・純損失(会計))。

ここで言う①を「永久差異」と呼ぶが、これは税務と会計で取扱いがそもそも異なるため、税効果会計の対象とはならない。

重要なのは②の「一時差異」で、こちらは税務と会計が文字通り一時的にズレているだけなので、これを税効果会計という

テクニックを使って、時間をかけてズレを解消していくわけだ。

 

一時差異の仕組み

「一時差異」が生まれるのは、税務では“100%の状態”にならないと収益・費用認識しないので、帰属年度がズレるためである。

例えば、洋服がシーズン遅れとなり(陳腐化)、会計では在庫を減損しても、税務では売れる可能性が0でないとして費用認識しない。

洋服を切り刻み、販売の可能性がないと100%の確度で確認できない限り、課税の対象としようというわけだ。

そこで、会計の側が税務の認識タイミングに合わせて、ズレ(一時差異)を解消させる調整を加えるのである

(ちなみに一時差異には、純資産に計上される有価証券の評価差額や、一時差異”等”として繰越欠損金などもある)。

具体的には、実際に税金を払う時期まで、過払い分(将来減算一時差異、課税所得を減算する意)を繰延税金資産として計上する、

会計上の有価証券の簿価(洗替後)と税務上の簿価の差分について繰延税金資産を計上するなどの調整がある。

 

企業価値視点の発想

一時差異の調整を加える際には、「回収可能性」という大論点を検証する必要がある。

「回収可能性がある」とは、主に減算の対象となる課税所得のフローが将来発生する、または代替のプランがあることを指す。

踏み込んだ議論はしないが、要は将来年度の見通し(とその現在価値)に基づいて事業運営できる見込みがあるということである。

税効果会計は、この回収可能性の議論によって、単に会計と税務を調整する役割を超えた機能を担っている。

すなわち、税効果会計を適用させたいと思う企業には、将来年度についての企業価値に基づくプランニングが当然に求められ、

税効果会計上のルールの中でではあるが、取引の経済合理性を常に意識させる仕組みになっているわけだ。

今後、IFRSが徐々に適用されていくと、会計全体として企業価値を意識せざるを得ない傾向がより強まっていく。

税効果会計だけでここまで議論するのは大げさではあるが、過去のしがらみにとらわれず、

このトレンドにいち早く適用した企業なりビジネスパーソンがアドバンテージを得ることは間違いない。



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