ビジュアル キャッシュフロー経営の基本

ビジュアル キャッシュフロー経営の基本 (日経文庫)

キャッシュフロー経営を“弁える”

キャッシュフロー経営は、なぜ大切か。表面的な売上や利益ではなく、最終的に創出されるキャッシュに

目を向けるべきだというキャッシュフロー経営は、確かに理にかなった考え方である。

しかし、キャッシュフローさえ見ていけば適切な管理ができるかというと、当然そうではない。

例えば、立ち上げ期でキャッシュフローのマイナスが継続しても不思議でないベンチャー企業に、

キャッシュフローを重視した投資や営業をしろといっても、それは本末転倒な話ではないだろうか。

キャッシュフローで物事を測るというのは、どういうシーンにおいて、どのような点に留意して実施すべきか。

キャッシュフロー経営の“弁え方”について指南してくれるのが本書だ。

キャッシュフロー経営の必要性が高まる背景や、CF計算書の構造とB/S・P/Lとの関係といった基礎から、

経営手法としての限界やオペレーションへの落とし込み(KPI)、企業価値評価へのつなぎまで、

キャッシュフロー経営に関しては一通りの内容がコンパクトに収められている。

 

キャッシュフロー経営が求められる理由

キャッシュフロー経営が重視されるようになった背景には、企業価値に対する世の中の見方が変化したことがある。

この点を理解するために、企業の値段を計る企業価値評価の手法の変遷を見ていこう。

日本で長い間、重視されてきたのは、債権者の回収可能額を測る純資産価値や清算価値という最も原始的な手法だ。

結局、銀行が資金を貸し付けるにあたっては、将来の成長性うんぬんを測るのは難しいということで、

手っ取り早く判断でき、責任論になりにくい“担保”の有無を(今でも)拠り所にしているというわけだ。

しかし、対象企業が「いくら持っているか」よりも、「いくら生み出す力があるか」を計ることができれば、

間接金融が充足できなかったニーズに応え、しかもリターンの大きい貸付のオポチュニティがあるのではないか。

こうした観点で、ファンドによる出資や社債などの直接金融が徐々に普及していくことになる。

このシチュエーションでは、将来キャッシュフローを基礎に評価するDCF(Discounted Cash Flow)法が用いられる。

これにより経営者は、売上・利益に基づく“損得経営”や、手元現金を管理する“キャッシュ経営”に加えて、

投資・回収の見積もりや、運転資本の効率化など、キャッシュフローにまつわるその他の指標も複合的に管理する

視点が求められるようになったというわけだ。

 

キャッシュフロー計算書を理解する

このキャッシュフロー管理において、実務上重要なツールこそがキャッシュフロー計算書である。

キャッシュフロー計算書は、P/LやB/Sと異なり、会計処理の違いに左右されずキャッシュの出入りの実態が表れる。

もちろん、キャッシュフロー計算書の限界(非キャッシュ取引が見えない等)はあるものの、

読み取るだけでなく、自分で作成できるようになると、キャッシュの“流れ”が目に見えるようになってくる。

キャッシュフローの流れを読み解くだけでなく、EBITDAやフリーキャッシュフロー(FCF)等の指標を用い、

本書では、営業キャッシュフロー、投資キャッシュフロー、財務キャッシュフローそれぞれについて、

キャッシュフロー計算書の構造を、図表を用いながら分かりやすく理解できるようになっている。

さらに、CFROIやIRR、WACC、リアルオプションなど、キャッシュフロー経営におけるKPIについても

議論を深めているのが本書のいいところだ。

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