プロフェッショナルプレゼン。

プロフェッショナルプレゼン。 相手の納得をつくるプレゼンテーションの戦い方。

プレゼンテーションのリアルな悩みに答える

プレゼンテーションのノウハウをまとめた本は、世の中にあふれている。論理構成の考え方にフォーカスしたもの、プレゼンの場でのテクニックにフォーカスしたものなど、それぞれ、プレゼンテーションスキルの一角をなす、非常に重要なものではある。

こうした専門スキルは確かに役に立つのだが、プレゼンに課題意識のある方の「具体的に明日から何をすればいいのか?」という、現実の悩みに答えてはくれない。そもそも何を伝えるべきかや、そのメッセージをどんなストーリーで伝えるべきかといった悩みは個別具体的な話なので、汎用的なノウハウとして体系化しにくいものだ。

しかし、本書はそこにチャレンジした面白い1冊だ。博報堂の著名なクリエイティブディレクターである小沢正光は、自身が手書きしたプレゼンの構成案なども示しながら、読者に著者の思考プロセスを追体験させることで、具体的にプレゼンに応用できる頭の使い方をイメージできる内容になっている。

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Presentation designed by Takao Umehara from the Noun Project

イイタイコトをはっきりさせるコツ

プレゼンは、「はじめにメッセージありき」だ。メッセージとは、あなたがプレゼンでイイタイコトであり、イイタイコトがあってはじめて材料として何を集めておくべきか、どんなストーリーで話すべきかが決まる。著者は、メッセージを決めるコツとして“ひとこと”であることにこだわる。最も伝えるべき本質を表す“ひとこと”。これをどうやって抽出するか。

いわば、思考の視覚化だ。紙でもホワイトボードでもかまわないが、プレゼンのコンセプトについて、要点やポイントとなるべき考え方、論点などを書き出してみる。そうすれば、プレゼンのコンセプトに関する自分の「頭のなか」が、そこに具体化される。あとはそれを見ながら、考えを整理していくのである。この部分の話をひとことでいえば、なんだろうか。ということは、こうか・・・・・・と、目に見える自分の「頭のなか」と対話しつつ、部分ごとに”ひとこと化”しながら、見えてきたことをつぎつぎとそこに書き込み、ポイントをあきらかにしていく。

 

ひとこと化の効能

この作業を通じて見えてくるのは、伝えるべきことのエッセンスだ。伝え方として工夫される前ではあるものの、少なくともこれだけは伝えておきたいということが明確になるこの作業を徹底できるかどうかが、プレゼンの成否の50%を握る。逆に言えば、ここができていれば何があっても伝えるべきことがぶれない。

仮に30分のプレゼンではすべての内容のうちの20パーセントの量しか伝えられないとしても、的を得た20パーセントを伝えられる。

サマリーというのは、内容の全てを少しずつかいつまんで伝えることではなく、一部の内容に全く触れられなくても、“ひとこと”を伝え切ることだということを肝に銘じたい。

もうひとつ重要なのは、“ひとこと”はそれだけ重要で、磨き上げられていなければならないことだ。著者は、磨き上げる際のポイントを3つ、明確に示している。

「短さ」と「わかりやすさ」だけにこだわるのはある意味分かりやすいので、気持ちを動かすことにも注意を払うバランス感覚が個人的には重要だと思っている。

 

伝え方を工夫するポイント

ここまで来てはじめて、どのように伝えるかという伝え方の工夫にステージが進む。著者が教える伝え方の工夫は、大きく2つのステップに分けられると思っている。

ひとつ目は、伝える目的を設定するステップだ。

目的をどのように設定するかによって、プレゼンの組み立て方は違ってくるはずだ。たとえば、新しいプロジェクトの実施を自社の社長に提案するにしても、それを会社の新たなチャレンジと位置づけるのか、現状の顧客の不満足をフォローする意味合いに位置づけるのかで、プレゼンの組み立ては違ってくる。

もうひとつは、伝える目的に沿ってストーリーを構成するステップだ。

序盤にこのことを話したほうがわかりやすいな、つぎにこの話があるといい、そのつぎは・・・・・・と、プレゼンの現場で受け手に向かって自分が話している姿を思い浮かべつつ、思いつくままに、どんどん書き出していくのである。(中略)最初から隙のない完璧なものをつくりあげる必要はないのだし、あとで項目の取捨をしたり、編集したりするのだから、本来なら流れなど気にしなくてもいいのだが、この作業はそのあとのすべてのベースとなる。それゆえ、私は魂を込めるような気持ちで、自分のなかにあるものをすべて書き出すようにして取り組むことにしている。

 

相手に伝わる3つのTips

はじめの作業をしていれば、伝えるべきエッセンスがぶれることはないのだが、オーディエンスは、プレゼンの途中に分からないことや疑問が出ると、その先に頭が向かなくなる。だから、プレゼンを聞く相手に合わせて、はじめてでも思考を途切れず、相手の問題意識を汲み取ったオーディエンスフレンドリーな内容になっているかが、プレゼンの残りの50%を握る。ストーリーを構成する際のTipsは、本書の中でたくさん紹介されているが、個人的には、特に3つのTipsを意識的に活用している。

ひとつは、まずはスライド1枚ごとに確実に相手の理解を得ること。

ひとつのフレーズを用いて、1枚ごとにひとつの小さな納得を勝ち取る。それがいくつも重なるから、最終的に大きな納得を勝ち取ることができるのである。

プレゼンに熱が入ってくると、とにかく前のめりに伝えたいことが溢れてくるのだが、そこをぐっと押さえて、ひとつひとつ情報を分けて分かりやすさを追求することが重要だ。絶対に途中で相手を混乱させてはいけない。頭にスッ、スッと入るリズムを作ってあげることで、キーメッセージにたどり着いたときにオーディエンスは自然とこちらが伝えたいことの重要性に気づき、心が動く。

もうひとつは、「プレゼンは2度壊す」こと。

最初につくったものは、やはり思い込みが強く、客観性に欠ける。それに項目ごとの内容のバランスが取れていないことが多い。(中略)だから壊して、組み立て直す。ところが、組み立てなおしたものは、バランスや精度にこだわるあまり、ストーリーの流れはきちんと調整されていても、勢いや迫力に欠ける。そこで、もう一度、壊す。こうして2回壊してはじめて、強く主張すべきところは強く主張し、内容のボリュームにもばらつきがなく、ストーリーの流れも論理展開もスムーズで勢いもあるプレゼンができあがる。

最後は、シンボリックなデータを使うことだ。消費者はこう変わっている、あなたの顧客はこう考えているというデータを参考情報の位置づけではなく、有無を言わせぬ事実としてオーディエンスに突きつける。このテクニックは単なるパンチではなく、非常に合理的な意味がある。

シンボリックデータは、たいていプレゼンの最初で使う。なぜなら、見ればわかるデータに“代わりに語らせる”ことで、
提案の視点や考え方を直感的に理解してもらうことができるからだ。
そこで大前提を共有してしまえば、あとは川上から下るようなものである。

そのほかにも、費用対効果を明示する、スタンダードとオプションの2案を作るなど、相手の理解を促進するための視点がたくさん紹介されており、時折読み返すと必ずヒントがある重宝する1冊だ。



この本についてひとこと