Q&A 知的財産権の考え方

Q&A知的財産権の考え方

知的財産権の基礎のキ

知的財産権(Intellectual Property Right)は、M&Aによるパテント買収など、企業の競争優位を構築する上で、より戦略的に扱われるテーマになりつつある一方で、知財についてのリテラシーは、特に日本では専門家に著しく偏っているように思える。

そもそも知財とは何か、またインターネットでの情報発信等において誰もが知財と関わる中で個人にも課される権利・義務とはどういうものか。そういったごく身近なところから、知的財産のリテラシーを高めておくことは、近い将来、さらに複雑化するであろう知財を理解する上で重要と考え、本書を手に取った。

本書は、知的財産の基礎とトレンドを網羅した小冊子で、出版から年数を経ているため、最新の法改正を追いかけることはできないが、Q&A形式で分かりやすく基礎を学べる。

  1. 知的財産権とは
  2. 四つの古典的な知的財産権
  3. ブランドなどイメージ情報の法的保護
  4. マルチメディアに関する知的財産権
  5. バイオテクノロジーとその法的保護

 

知的財産権の概要

そもそも知的財産とは何か? まずはこの定義を理解することが重要だ。知的財産とは、技術情報やイメージ情報、識別情報(商標など)、文化情報(著作物)など有形の資産(アセット)とは異なり、形のない無形の情報資産を所有物として扱ったものを指す。個人がインターネットで発信した情報も、「個人の思想や感情を創作的に表現したものであって、文学、学術、美術、又は音楽の範囲に属するもの」などの要件を満たせば、知的財産になる。これらの知的財産を創作した者は知的財産“権”を有し、一定期間その経済的利用の独占権を与えられるというのが基本的な知財の考え方だ。

こうした権利は、知的財産法(著作権法や特許法などの総称)だけでなく、民法(所有権法、不法行為法、契約法)、商法、不正競業法(機密漏洩・模造の取り締まり)など、様々な法律関係によって保護されていることも、基本知識として知っておきたい。

 

知的財産権の期限

知的財産権は、保護される期限が決まっている。例えば、著作権は著作者の生存中と死後50年、特許権は出願公告から15年に限定されている。この期間の範囲において、権利が侵害された場合、権利者は差し止め請求や損害賠償請求を行うことが可能になっているわけだ。では、こうした権利にはなぜ期限があるのだろうか。

それは、知的財産は究極的には「公共財」であるという発想が根底にあるからだ。どのような知的財産も、完全にこれまでの蓄積から切り離されて生まれたものはなく、その意味で、さらなる社会の発展のために共有されるべきだと考えているわけだ。

 

知的財産の地理的範囲

知的財産権は、基本的にそれが生み出された国の内部で認められた権利だ。法律は基本的に「属地主義」で運用されているため、国際的な法規定で例外を作らない限り、グローバル化が進んだ昨今においても、海外では知的財産は守られないということだ。

もちろん、こうした事情に対処するために、各国は互いに知的財産の申請を受け入れあい、また、著作権でいえば「文学及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約」(1886)や「万国著作権条約」(1952)など、国際条約レベルで権利を保護する環境を作ってきた。

しかし、現在も中国をはじめ知的財産制度が確立されていない国々では侵害が相次いでおり。経済的な協力関係に持ち込んで利益を守るなど、現実に即した対応も求められている。

 

知的財産の概念の広がり

さらに著者は、近年における知的財産の更なる広がりについても解説している。例えば、インサイダー情報の扱い、ブランド、キャラクター、タイポグラフィー、サービスマークなど、現状では、不正競争防止法や商標法などの解釈でカバーしているものの、根本的にはやはり法制度として改めて整備されなければいけない領域が増えている。また、視覚的なもの(文字・記号・図形など)に加えて、今後は音や光、立体など、様々な知的財産にも対応が必要になっているなど、知的財産制度は難しい局面を迎えている。

一方で、ソフトウェアなどの世界で、あえてコピー・レフト、すなわち著作権を主張しない動きや、ウィキペディアのように個人に発生する著作権・知的財産権を超えた共有財が出てくるなど、ルールで縛るだけでなく、新しい可能性を模索する動きも重要になってくる。



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