機械との競争

機械との競争 Race Against The Machine: How the Digital Revolution is Accelerating Innovation, Driving Productivity, and Irreversibly Transforming Employment and the Economy

仕事はどこへ行ってしまったのか

2007年から2009年の大不況(Great Recession)で、アメリカでは1,200万人の失業者が生まれた。その後、大不況は2009年6月には終結し、2010年には設備・ソフトウェアに対する投資額が過去のピークの95%まで驚異の回復を遂げるわけだが、そんな投資の復活はどこ吹く風、雇用の方は2011年の段階でも失業率9.1%と悪化したままで、大不況の失業者を吸収するには程遠い水準に留まっている事実を、あなたは知っていただろうか。

大不況以前にあったはずの仕事は、一体どこへ行ってしまったのか。この問いに、MIT Sloan Schoolの研究者がテクノロジーと経済の関係から挑んだのが本書だ。アカデミックな調査と経済学の理論に基づきながらも非常に平易な文章は、出版されるやNew York Times、Wall Street Journal、Financial Timesなどで話題となった。

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テクノロジーの質的変化

仕事が消えた要因について、大きく3つのタイプがあると著者は語る。

景気が戻りきっていないとする「景気循環説」、
雇用を創出するイノベーションが停滞しているとする「停滞説」、
反対にイノベーションが早すぎ、テクノロジーが雇用を奪うとする「雇用の喪失説」

著者は、この3つめの「雇用の喪失説」に着目すべき時期に来たのではないかと訴える。機械と言えば、一昔前は人間以上のパフォーマンスを発揮できるのは、限られた特定の領域でしかなかったが、Big Data解析に基づくパターンマッチング等、“量”を“質”に転化できる術が整ってきた今や、複雑なタスクもあたかも人間のように処理できるようになってきたのである。著者は、テクノロジーが恐ろしいスピードで進化している状況を生々しく描いていく。

 

どうやってサバイバルすべきか

人間の方がテクノロジーに必死で追いつこうとする「大再構築(Great Restructuring)」の影響は、既に様々な形で現れている。まず、機械でも置き換えられるコモディティスキルの価値は限りなくゼロに近づくため、中所得者層の平均所得は既に減少しつつある。一方、機械に置き換えにくいタイプの肉体労働やスペシャリティスキルの領域でも、既に弁護士、セールスマン、ドライバーといった職が機械に浸食されつつあり、あとは時間の問題でしかないかもしれない。

では、僕らが「大再構築(Great Restructuring)」を生き抜くための術とは、一体何だろうか。著者は、ミヒャエル・エンデの『モモ』のようにテクノロジー自体を否定するのではなく、前向きな打開策を模索している。

この現象を理解して影響を検討し、労働者が技術に対抗するのではなく、技術とともにこれからの競争を乗り切っていけるよう戦略を練らなければならない。

 

機械との“競争から共創

テクノロジーを味方につけて、テクノロジーの革新による恩恵を受けるにはどうすればいいのか。著者は、この点について、大きく以下2つの方向性に基づいて、19の提言を行っている。

1. 組織革新を質とスピードの両面で推進すること
2. 人的資本を強化し、現在のみならず将来に求められるスキルを習得させること

1は、目の前の安定に拘泥せず、テクノロジーを受け入れて価値の低い仕事から抜け出すことだ。人間ならでは、自分ならではの仕事を探し続けることが、中長期的には生き残りにつながる。2は、テクノロジーのリテラシーや、リーダーシップ・チーム作り等のソフトスキルを育むことだ。

本書では、教育政策の強化等の政策提言が行われているが、あなたのキャリアについて考えた時に、どんなリテラシーやスキルを磨いておくことが、あなたが生き残るためのカギになるだろうか。

 

TEDでの著者エリック・ブリニョルフソンのプレゼンテーション
「成長のための鍵は何?機械との競争」

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