ラファエル・ナダル自伝

ラファエル・ナダル 自伝 Rafa: My Story

2008年ウィンブルドンのラファエル・ナダルとロジャー・フェデラーの決勝は、
131年の大会史上、最長で最高の試合となった。

2006年、2007年と、永遠のライバルであるロジャー・フェデラーに決勝戦で2度も優勝を阻まれ、

怪我にもずいぶん悩まされながら、3度目の正直でウィンブルドンのトロフィーを手にしたナダル。

あのシーンを忘れられないテニス・ファンは、世界中で数知れないだろう。

もちろん、彼の偉業はそれだけに留まらない。

2005年に19歳でグランドスラム初優勝を飾った全仏オープンでは、

先日開催された2011年の大会で通算6回もの優勝を達成。

2010年には、苦手としていたハードコートの全米オープンで優勝し、

早くもキャリア・グランドスラムを成し遂げている。

 

本書では、そんなラファ(ナダルの愛称)自身が、これまでの名勝負の一挙手一投足を

語っているから、それだけでナダルファン、テニスファンにはたまらない1冊である。

しかし、本書の1番の魅力は、彼が正直に自分の心の弱さとの葛藤を打ち明けていることだ。

肉食獣のように闘争心に溢れ、どんなボールも諦めずに食らいつく彼のプレースタイルは、

心の弱さなど感じさせないが、実際は、試合前のルーティン(グリップを巻く、冷たいシャワーを

浴びる等の決まった動作)にとことん神経質で、ロッカールームで跳びはね、「バモス!」と

叫ぶことで辛うじて不安を押し込めるような、非常に繊細なタイプの選手なのである。

本来はメンタルの弱いそんな彼が、どのように心を鍛え、一流のプレーヤーであり続けているのかは、

僕のように根の弱さを自覚しつつも上を目指していたい人にとって、何にもまして励みになるに違いない。

 

僕が彼から受け取った、メンタルの弱さを克服するカギは大きく3つある。

 

ゲームプランを持つこと

彼は一見したところ肉体派に見えるが、テニスを頭で考えるタイプの選手である。

自分よりランキングの低い相手でも、プレーを分析し、勝つためのパターン(ゲームプラン)を考える。

これは、本番で不安になりがちな人こそ確実にやっておかなければならないことだと思う。

ゲームプランを着実にこなすことに集中することで、迷いが生まれにくい。

“このやり方なら勝てそうだ”、“あれはダメでもこれは勝ち取ろう”という見込みを言葉にすることが大切だ。

大事な商談やプレゼンなど、テニスの試合のように一発勝負の場面は僕たちの身の回りにもたくさんある。

ゲームプランを持つことは、個人的に3つのカギの中で一番大切にしたいポイントである。

本番の雰囲気に飲まれて不安を感じても、ゲームプランを信じることである。

誘惑に打ち勝つには、常に短気や不満を抑制しなければならない。

 

忍耐力を持つこと

2番目の忍耐力を持つことは、「何だ、それこそメンタルの強い人のことではないか」と

思われるかもしれないが、彼の言う“忍耐力”は、単純に何事にも打たれ強いことではない。

自分が攻めるべきタイミングを弁えることである。

例えば、対戦相手が鮮やかなダウン・ザ・ライン(決め球)を決めたとき。

ここで落ち込む必要は全くない。相手の良さを認め、失敗をひきずらないこと。

同時に、相手の好調が1試合中は続くはずはないと信じ、ある意味、楽観的にその時に備える。

ゲームプランを持つことに通ずるところがあるが、

一球一球に一喜一憂せず、試合全体として自分が優位に立つことを考える

ウィニングショットを打てるチャンスが来る。
成功する確率は70%。しかし、あと5回我慢してショットを続ければ、確率は85%に上がる。
だから、注意深く、我慢強くチャンスを待つ。焦ってはいけない。
僕はプレーをしている間ずっと、その瞬間の気持ちや相手の士気、スコアを考えながら、
最適な戦略を選択しようと考えている。今やるべきことは、忍耐強くラリーを続け、
無理はせず、チャンスが来た時に掴むことだと考えた。

 

心強い仲間を持つこと

3番目は、心強い仲間を持つことである。

彼は、マナコルという結束の強い町で生まれ育ち、今も家族と暮らし(試合の翌日には帰る)、

コーチの叔父をはじめ、理学療法士、エージェント等のチームは十数年も同じメンバーだ。

また、同じマヨルカ島出身で元世界ランクNo.1のカルロス・モヤが、彼の気の置けない相談相手。

加えて、ロジャー・フェデラーという永遠のライバル=仲間も、彼を大きくした重要な要素だろう。

もちろん、ラファのカリスマ性やテニスの実力が、そうした仲間を引き寄せたという側面はあるが、

長友佑都選手も語っているように、自分を高める環境は意識的に作っていくことが重要だ。

 

最後に、何事にも不安を感じるというのは、成功するためのキーワードだと僕は思っている。

ラファエル・ナダルの心配性は、決してネガティブなものではなく、勝つための心配りなのだ。

“無くせない夢ならば、無くす程の覚悟で”

これからもラファを横目に見ながら、自分も不安をコントロールできるよう、3つのヒントを活かしていきたい。



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