ハーバードからの贈り物

ハーバードからの贈り物 Remember Who You Are: Life Stories That Inspire the Heart and the Mind

心のエリート

大学や大学院の授業から得られるものは何だろうか。

もちろん、分かりやすい価値は、専攻した学問分野に関する専門知識・スキルを得られることにある。

しかし、それだけで卒業後の成功が保証されるかといえば、それが十分条件でないことは明らかだ。

実際、ハーバード大学の研究で、在学中の成績とその後のキャリアの成功を関連づける結果は

出なかったという。では、卒業後の成功を左右する、本当に学ぶべきこととは何だろうか。

本書は、こうした問題意識にもとづき、ハーバードビジネススクールの教授が学生に贈ったメッセージである。

高いレベルの知識やスキルを身につけることはひとつの前提でしかなく、

キャリアや人生に対する“心のあり方”や“物の見方”を身につけることこそ、その人の豊かなキャリア形成に

つながるというメッセージは、ビジネスパーソンに共通して気づきを与えてくれるものだ。

 

リーダーたれ

ハーバードビジネススクールと言えば、トップスクールとして学生に最高水準の知的能力を求める一方で、

リーダーシップやマネジメントなど、ソフト面のスキルを習得させることに熱心なことでも有名である。

「将来、重要な責務を負う者として、強く、誠実なリーダーたれ。」

このように、心を鍛えることこそ、学んだ知識・スキルに魂を入れることだと理解しているのである。

本書に収録されているメッセージも、プロフェッショナルとしての矜持のこもった熱いものが多く、

教授たち自らのエピソードや、ユニークな比喩を交えたメッセージは、僕たちを決して飽きさせない。

進むキャリアは皆、多種多様だが、そこに共通する“より良くなりたい”という読者の思いに応えてくれる。

 

彩り豊かに生きる

例えば、歴史学者のトーマス・K・マックロウは「黒か白か」というエピソードを語っている。

彼の父親は、公共事業を行う公社に勤めており、ニューディール政策の恩恵を受け、業績を上げてきた。

しかし、20年ぶりの共和党政権誕生で、公社の解体や民営化が行われるのではという懸念が広がった。

彼の父親にとって、そうした意味で民主党は善で、共和党は悪だったのである。

しかし、政権交代後に実際に起きたことは違った。

むしろ、共和党政権下で公社は一層の成果を上げることができたのだ。

マックロウは、この出来事が、物事を二元論で語ることで思考が束縛されていたことに気づいたという。

この経験を踏まえ、彼は学生に“その考えがどこからきたのか”に目を向けることが重要だと訴えている。

そうすることで、白黒で思考する癖から抜け出し、「黒と白との間にもさまざまな色があることに気づ」ける。

このことは、ビジネスシーンだけでなく、日常生活においても彩りを豊かにするためのヒントとなる。



この本についてひとこと