ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず

ローマ人の物語 (1) ― ローマは一日にして成らず(上) (新潮文庫) ローマ人の物語 (2) ― ローマは一日にして成らず(下) (新潮文庫)

人間臭さと客観性の合わせ技

塩野七生の歴史小説は、とにかく面白い。紀元前に生きた人々まで、彼女の手にかかると生き生きして感じられる。彼女は「興隆は当事者たちの精神が健全であったからであり、衰退はそれが堕落したからだとする論法に納得できない」と語る通り、人物観に目を向けながらも、登場人物の人情的魅力に頼るのではなく、常に歴史の構造の中にその人を位置づけようとする。この人間臭さと客観性をギリギリのところで統合するスタイルが、他の歴史小説と決定的に異なる、唯一無二の面白さを与えている。1千年に亘る歴史を描いた『ローマ人の物語』は、著者のマグナム・オーパスに位置づけられる。

 

ローマの成長期(ローマ誕生~共和制ローマ)

この壮大な歴史絵巻の第1幕(Ⅰ・Ⅱ)は、ローマの誕生から、数々の戦争、外交戦略を経てイタリアを統一し、ひとつの政治的システム(共和制)を確立する時代まで、人間で言えば、生まれてから30歳あたりまでの成長期を描いている。「ギリシアが早くも没落したのになぜローマは興隆しつづけるのか」という、ローマ論の根本をなすキーポイントを理解するには、まさにこの成長期を捉えることが不可欠だと思う。文庫版で43冊にもなる『ローマ人の物語』の中でも、特にエッセンス的なパートである。

 

ローマが興隆した構造的必然

作者は、そのキーポイントを次のように要約している。

「宗教が異なろうと人種や肌の色がちがおうと同化してしまった、彼らの開放性ではないか」

当然ながら、若きローマは強国の脅威に揉まれ、また国内の不一致に混乱してきたのであり、その意味で、彼らがあるべき政体を当初から見通していたということではない。しかし、より良い哲学、アイディア、仕組みがあれば柔軟に取り入れる“巧妙さ”を持っていた。時に相反する方法論ですら取り入れる、その積み重ねがローマをして最終的に地中海全域を支配させたのではないだろうか。

 

当時の強国との違い

第1幕では、当時の強国であるギリシアやカルタゴについても詳しい分析が行われているが、

などの面で、こうした国と比べた“巧妙さ”の違いが浮き彫りにされていく。ローマ人の気質を考えると、彼らが何を考え、どういう構造的必然からその選択を行ってきたのか。作者が描く丁寧な追体験を通して、読者はローマの不思議な魅力の虜となっていく。この面白さは筆舌に尽くしがたいが、中毒的だ。



“ローマ人の物語 ローマは一日にして成らず” への1件のコメント

  1. nymuse1984 より:

    新潮社にローマ人の物語専用サイトあり!http://www.shinchosha.co.jp/topics/shiono/bunko.html 制作の舞台裏が分かる

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