意味の世界 現代言語学から視る

意味の世界―現代言語学から視る (NHKブックス 330)

言語とは何か

人間は、言語を通して世界を認識している。例えば、日本語で言う「微妙」にばっちりと対応する言葉は英語にはないから、「微妙」の意味合いは、「微妙」という言葉を知っていないとを正確には理解できない。外国語を勉強することで、新しい概念や物の考え方に気づくというのも、同じ仕組みだ。

本書は、このような言語などの記号の仕組みを分析する、記号論・意味論と呼ばれる分野の入門書で、普段気付かない言葉の不思議を教えてくれる面白い本だ(著者の『記号論への招待』も併せて読みたい)。言語が表す「意味の世界」を理解することで、人間が物事をどのように捉え、比較し、理解するのか。また一方で、言語の限界、すなわち思考の限界についても、これまで見えなかったものが見えてくる。

 

言語を理解するための3つのエッセンス

この分野の第一人者である著者は、言語を理解するためのエッセンスを明快に整理している。この3つのエッセンスは、言語に関する普遍的な要点を非常によく捉えている。

この3点をしっかり頭に置いた上で、言語の特徴的な機能を見てみよう。

 

言語の面白い働き

代表的な機能として、ここでは転移性、創造性、包括性、有契性を簡単に紹介したい。

単に別の場所にあるものを表わしたり、あると嘘をつくことができるだけでなく、直接見聞きしたこともない過去や未来のことも表すことができる。

婉曲・皮肉・戯語などを使って、物事を豊かに表現したり、時に暴力性を持たせることができる。言語の社会的意味(言葉の力)に関わる重要な機能。

例えば「男」(包括語)には「父親」や「息子」(被包括語)、「子供」には「息子」や「娘」が包括される。物事を抽象化・具体化したり、概念間の論理的な関係を捉えるための機能。

例えば「雨」は「水」と結びつき、「身長」は「長い」ではなく「高い」と結びつく。モールス信号や漢字の読みがななどは、親和性ではなくルールで決められた恣意性と呼ばれる。

 

言葉と主体的につきあう

このような言語の働きは、言われてみれば“アタリマエ”のことばかりだ。しかし、逆に言えば僕らの思考は、このような“アタリマエ”にどうしても拘束されているのであって、この限界といかに寄り添いながら、この世界と向き合っていけるかが大切になってくるのである。

詩人が紡ぎ出す豊かに広がった世界や、陰陽師が言葉を操ることで創り出す「呪」の世界。政治的プロパガンダが創り出す世界に、facebookやtwitterでやり取りされる日常の世界。言葉による世界の切り取り方は無数にある。そのことに気付くだけでも、世界の見方が大きく変わってくるのではないかと思う。



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