SHARED VISION

SHARED VISION

ソーシャルメディア活用の基本のキ

世の中のトレンドは、猫も杓子もソーシャルメディアを使わねば、という状況だ。一方で、マーケティングコンサルティングの現場で見ている限り、企業のソーシャルメディア活用実態は、成功と言えるのは一握りに過ぎない。あるレジャー系企業では、ソーシャルメディアでグッズを売ろうとして全く反応がなく、また別の食品メーカーでは、ソーシャルメディアで商品を紹介していたが、結局テレビの方が効果的ではないかとの社内の声で1ヶ月で取り止めてしまった。ソーシャル、ソーシャルというものの、本当に効果なんてあるのだろうか。

そんなスタート段階で疑問をお持ちの担当者にオススメしたいのが本書だ。電通でソーシャルマーケティングのスペシャリストとして活躍する著者が、事例を交えながら解説する、ソーシャルメディア活用の入門書になっている。ソーシャルマーケティングをかじったことがある人にはちょっと物足りないかも。

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シェアードヴィジョンをどう共有するか

著者が基本に据えるのがシェアードヴィジョンのコンセプトだ。ソーシャルコミュニケーションでどんな価値観を共有したいのか。一般的なマーケティングにおいても、目指すべき姿を定義することが出発点になるが、ソーシャルコミュニケーションの場合は、<経営者>、<社員>、<生活者>の3者が自然と共有できるものという視点から、改めて定義し直すことが大切になる。

「企業がどうしたいか」ではなく、「どのような生活や社会、そして未来を、ともにつくりたいか」に視点を広げて、共感できる理想をシェアすることがポイントだ。ただし、新たに奇を衒ったものを作れというわけではなく、既にある企業自身の価値を3者の視点から見直すことこそ、オリジナルなシェアードヴィジョンにつながる。

まずはできるところから、自社のブランドが共感されるポイント(コアエッセンス)を掘り起こしていく作業、すなわち「価値の改築=リノベーション」を始めるのが望ましいと思っています。

 

定義すべき5つの要素

著者はシェアードヴィジョンを含め、掘り起こしていくべき5つの要素を定義している。

シェアードヴィジョン 生活者やファンとどういう価値(観)
ターゲット まず誰がファンとしてコミュニティに参加してくれるか
戦略 どのようなコミュニティにしていくか
目標 指標の設計と目指すべき状況(ファンの心理変容など)
成長ストーリー 長期的な視点でブランドと生活者の関係をどのように発展させるか

これらもひとつひとつはマーケティングとして当たり前のことばかりだが、特に違うのは、ユーザーを具体的に感じながら落とし込んでいくことだ。具体的なファン像の想定、コミュニティの成長に合わせた設計、達成感のデザインなど。細かなアジャストメントの視点がより重要になるのだと感じた。

 

カンバセーションをマネジメントする視点

後半は、実際にソーシャルコミュニケーションを運用していくフェーズについてだ。著者は、「カンバセーションマネジメント」という視点の重要性を強調している。

大企業のブランドの担当者やマネジメント層こそが、店頭でお客さんをお迎えするのと同じリアルな現場感覚を持たなくてはならなくなってきている

この点を踏まえ、事例を交えながら明日からできる運用ノウハウが解説されている。担当者は何人置けばいいのかからはじまり、ユーザーの声の掴み方、企業からの投稿の作り方、現場担当者の巻き込み方など、教科書論だけでは分からないPDCAの実際が描かれている。

著者が携わったプロジェクトとして、テレビ新広島の『ひろしま満点ママ!!』の事例が紹介されており、地域密着型で予算も少ないであろう同番組がFacebookページを立ち上げるところから、一連のプロセスがリアルに記録されているので、これからソーシャルメディアをはじめる担当者にとって身近な参考例として活用できる。

※参考にした書評「[∈]【書評】SHARED VISION」



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