新書365冊

新書365冊 (朝日新書)

今や出版のメインストリームに加わった新書は、“ホットな話題をコンパクトに”伝えるメディアである。

宮崎哲弥はこの新書の特徴に目をつけ、時代の潮流を読み解いているか、

かつ正確に分かり易い内容かという基準を軸に膨大な数の新書に評をつけることで、

書評集そのものが世相論になる興味深い一冊を作り上げた。

本書が雑誌に連載されていた当時、出版された新書は全て読んでいたというから驚異的だ。

どんな分野も分け隔てなく語る宮崎節は、普段手にしない本との出会いを演出してくれる。

いわゆる人文系の書評が多いのは著者の立ち位置、軸なので当然のこととして、

社会科学系、自然科学系においても“教養”を身につけるための、水先案内人になることは確かである。

評のつけ方も客観的で、この新書に欠けた視点は何か、それを補うのはどんな本かを解説する親切さも、

この本のいいところだ。

 

新書としての“あるべき”論を、著者は「大衆啓蒙メディア」と呼んでいる。

つまり、ひとつには専門のタコツボに閉じこもらず、広く公に向けて発信するメディアであること。

もうひとつには、“机上論”的ではなく、すぐれて“実践”的であることである。

“実践”的とは、物事を現実に即して分析し、かつ実務的な観点で検証していること、

さらに、読者もそれを追検証できることである。

新書がこのような機能を果たすことで、僕ら“大衆”が井戸端会議的な議論から脱して、

「民度」(宮台真司)の高い議論の土台が作られる可能性があるのではないか、というわけだ。

一方で、新書は「オンデマンドなニーズにしか応えない本が多くなった」とも著者は指摘している。

今欲しい情報をチェリーピックする良さはありつつ、それだけでは議論の全体像には決して辿りつかない。

読者の側にも“全体に対する各論”という地図を頭に描く努力をする意識が、新書をより良くするポイントだ。

 

各新書に対する書評の中身は、量・質ともに厖大なので詳しく触れられないが、

生命観の問題(人工生命等)、国際情勢の問題(地政学的交渉論、宗教論等)などの

ホットイシューに対して、広範に亘る分析が付け加えられていて非常に参考になる。

どのイシューに対しても、著者の姿勢は「感情に流された、無批判的な議論はするな」で一貫している。

ロジックとしておかしくないか、という最低限のチェックにはじまり、反対の立場のオピニオンと比較してどうか、

本質的な問題解決につながる提言か(議論のための議論になっていないか)という視点で掘り下げていく。

例えば、『核拡散』(川崎哲)では、「市民社会」性善説に寄りかかる著者のオプティミズムを痛烈に批判し、

『ファスト風土化する日本』(三浦展)にように、問題の本質を社会のエコシステムと見定め、

社会の賦活に向けた具体的なプランを提示しているものには、正当な評価を加えるといった具合である。

あなたもミヤテツのディスカッションに参加することで、物事に対する理解を深化させることができるだろう。



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