ブリッジマンの技術

ブリッジマンの技術 (講談社現代新書)

ブリッジマン(bridgeman)は人の名ではない。

著者は有名な科学者なので、ブリッジマンという科学者を題材にした本だと思っていたが、

コミュニケーションにおいて相手との認識の「橋渡し」ができる人を指す造語だという。

コミュニケーション上手なブリッジマンになるためにはどうすればよいか。

著者は、コミュニケーションにおける認識の枠組み(フレームワーク)を科学的に分解し、

そこからブリッジマンになるためのキーファクターを抽出していく。

そのポイントを一言で言うと、相手のフレームワークに自分のフレームワークを合わせることだ。

相手の考え方を直すより、自分の考え方を直そうというのが基本的な発想だ。

感情や利害構造等のコミュニケーション変数に、相手の身振りや口ぶりを考え合わせると

自分のフレームワークを相手に合わせてどう矯正すべきかが見えてくる。

どこまでも科学的にコミュニケーションを読み解き、処方箋に落とし込んでいるところが面白い。

 

本書のキモは、第1章「フレームワークは人間関係の基本原理」に集約されている。

僕たちは、ものの見方(フレームワーク)をどのように形成し、維持・強化、変化させているのか。

この由来を特定することで、コミュニケーションのあり方が変わってくる。

例えば、フレームワークが形成されるシーンとして、2つの要因を挙げている。

  1. 先天的な要因(性別等の生来属性に対する社会・文化的な価値観に由来)
  2. 成長する過程における要因(生育環境や教育、職業等に由来)

これを理解するために、僕が友人から聞いた次の実験をしてみよう。

あなたが記憶している一円硬貨の大きさの円を、紙に書いてみてほしい。

本物の一円硬貨と比べてどうだろうか。

本物より大きければ一円の価値を実態よりも高く、小さければ安く感じているという。

これは、2の成長過程において獲得するフレームワークの典型例である。

 

ここが読み取れると、不利な状況下でも相手より優位な立場に立つ、

あるいは両者がwin-winな関係を築くための交渉の選択肢が見えてくる。

例えば、古い例だが桶狭間の戦いにおいて、織田信長が今川義元に勝った要因を考えてみよう。

量的に不利だった織田信長は、あの時、どのようなことを考えていただろうか。

“大軍を率いる今川義元は、小規模な織田軍を効率的に制圧するために部隊を分散させだろう”、

“相手のホームに攻める今川義元は、敵陣を見通せる高所より攻め降りてくるだろう”と、

相手のフレームワークを読み取ることで、状況を転換する戦術に目を向けることができたのだと思う。

このことを、著者は『プラグマティズム』(ウィリアム・ジェイムズ)の一節を引用して説明している。

およそ一個の人間に関してもっとも実際的で重大なことは、その人の抱いている宇宙観である。
敵と矛を交えようとする将軍にとって、敵の勢力を知ることは重要ではあるが、
しかし敵の哲学を知ることの方がよりいっそう重大なことである。

本書の後半では、上記のようなフレームワークの原理をもとに、相手のフレームワークを読み取るポイント(第2章)や、

読み取ったフレームワークに自分のフレームワークを合わせるためのTips(第3章以降)に話を進めていく。

ここでは根幹の考え方のみを紹介したが、より理解を深めたい方は是非本書を手に取ってほしい。



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