思考の整理学

思考の整理学 (ちくま文庫)

思考の“発散”、思考することの“楽しさ”

本書は、大学生、ビジネス人はもとより、広く愛読されている思考を鍛えるアイディア集だ。

僕の手元の本(2007年)で既に39刷を重ねているというから驚きだ。

よくある思考テクニック(クリティカルシンキング等)が“思考の収斂”法を取り扱うのに対して、

本書は“思考の発散”に目を向け、アイディアを生み出すための頭の使い方について

様々なアドバイスやテクニックを教えてくれる。

また、純粋に“思考すること自体の楽しさ”を重要視しており、ものを考えることを

自分の価値にしていきたい人にとって、読んでいて励みになるのもポイントだ。

著者も本文中で触れているが、長い学校教育で収斂的思考、100点満点がありうるという

本来なら特殊な思考を叩き込まれてきた僕らが、物事をつなげる、生み出す発想にこそ

価値がある時代にサバイバルできるのか。そんな危機感もある。

 

思考の“コツ”をつかむ

フツウの人がアイディアマンになるのは、思考のコツをつかむことが大切だ。

例えば、僕はコンサルティングファームで様々なアイディアを求められる場に身を置いているが、

コンサルタントがアイディアを出せるのは、発想が無から湧いてくるのではなく、頭の使い方がうまいのだ。

思考が行き詰ったときに、どういう視点で考えれば発想のブレイクスルーを生み出せるか。

そのための引き出しをいろいろ持っているわけだ。

本書は、まさにコンサルティングワークの中で習得していく引き出しに近いものを整理してくれている。

文筆業やコピーライター、アーティストなど、アイディアを生業とする人に共通する技能なのだろう。

例えば、「思考を寝かせる」、「アナロジー」、「情報の“メタ”化」、「とにかく書いてみる」など、

あなたの思考が進まないときに有効な頭の使い方が、きっと何かしら載っているはずだ。

 

一次情報を料理する力

インターネットが当たり前の今、理由がない限り、普段の情報収集は“第二次的現実”で済ませがちだ。

ニュースフラッシュ、サマリー、サルでも分かる、まとめサイトなど、僕らが情報収集にかける手間は、

どんどんと省力化され、情報は与えられるものになりつつある。

しかし、物事の真相・深層を本当に知ろうと思えば、“第一次的現実”の理解は決して欠かせない。

ただ、自分自身でナマの情報にあたるには、それなりの能力が求められる。

思考の整理ということから言っても、第二次的現実、本から出発した知識の方が、始末がいい。

都合よくまとまりをもってくれる。第一次的現実から生れる知恵は、既存の枠の中に

おとなしくおさまっていない。新しいシステムを考えないといけないことが多い。

ポイントは、主体によって読み取られた情報を客体化できるかどうかだ。

インタビューやアンケートなどの生のデータを、何をテーマに、どういう軸で料理するのか。

思考のコツを掴むことは、一次情報から新たな発見を生み出す能力にもつながる。

 

思考のぜいたく

思考をフル回転させ続けることは、正直なところ精神的・肉体的にきびしいときも多い。

ときには、もうやめてしまいたいと思う瞬間も多いのが現実だ。

しかし、著者の文章からは、考えることの苦労と、その裏にある喜びがすごくよく感じられる。

最後に、著者からのメッセージを引用しておきたい。

考えるのは面倒なことと思っている人も多いが、見方によってはこれほど、

ぜいたくな楽しみはないのかもしれない。

何かのために考える実利実用の思考のほかに、ただ考えることがおもしろくて考える

純粋思考のあることを発見してよい時期になっているのではあるまいか。



この本についてひとこと