日本語の作文技術

新装版 日本語の作文技術

「誰でも文章は書ける」は間違い

日本人の作文能力は、正直なところ英語圏に比べると相当劣っていると思う。

実際、日本で作文技術を学ぶ機会は、大学入試の小論文か大学の卒業論文くらいしかないし、

学ぶとは言っても、入試や検定に通るようにする手先の技術にしかすぎない。

新聞・出版業界の方が「素人の文章は半分にできる」と言うとおり、文章が冗長で、

文章を「客体化」するより、「主体化」した文章の方が感性があっていいとされる始末。

僕自身も、社会人になって文章力が求められるプロフェッショナル職について初めて、

自分の文章がいかにダメか、ようやく痛感させられることになった。

そんな時に、コンサルタントの先輩からすすめられたのがこの本だ。

著者の本田勝一は、朝日新聞の記者で、報道内容への賛否はあるようだが

作文技術という意味では非常に頼りになるプロフェッショナルだ。

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文章を書くための11のポイント

著者が教える作文技術は、大きく11のポイントから構成されている。

はじめの5つのポイントが、書いたものを文章と呼ぶ上での最低条件、

後ろの6つは、より“読ませる文章”にするためのプラスアルファといったところだ。

  1. 修飾の順序
  2. 句読点の打ち方
  3. 漢字とカナの心理
  4. 助詞の使い方
  5. 段落
  6. 無神経な文章
  7. リズムと文体
  8. 書き出しをどうするか
  9. 具体的なことを
  10. 原稿の長さと密度
  11. 取材の方法

 

修飾の仕方に関する4つの大原則

実は、はじめの5つのポイントをクリアするだけで、文章は見違えるように変わる。

ここでは、その中でも特に重要な、修飾語の使い方を紹介したい。

修飾を分かりやすくするには、4つの原則を守ることが重要になる。

例えば、以下の例を4つの原則に当てはめるとどのくらい読みやすくなるか。

(悪い例)私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したのかと思った。
(良い例)鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私は思った。

「私は→思った」、「小林が→証言した」、「中村が→いた」、「鈴木が→死んだ現場」という

修飾・被修飾の関係が離れすぎていたのを直しただけで、ずいぶん読みやすくなる。

(悪い例)Aが私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCに紹介した。
(良い例)私がふるえるほど大嫌いなBを私の親友のCにAが紹介した。

この場合も、日本語として間違えているわけではないが「Aが私が」が分かりにくい。

「私が」という最も短い修飾語を、被修飾語である「紹介した」にくっつければ読みやすくなる。

 

読みたくなる文章

修飾語や句読点、助詞の使い方をマスターすると、読みやすい文章は誰でも書けるようになる。

その先の読み手が読みたくなる文章に仕立てるには、また違ったコツが必要だ。

それがポイントの6以降の思考法とテクニックだ。

本書で紹介されていた以下の視点は、相手にSomething Newを与えられているか

自分の文章を批判的に見るためのいい試金石になると思う。

このあたりはさすがジャーナリスト。

基礎的の作文技術は一通りこなせる方も、この後半でたくさん学べる部分があると思う。

 

文章の論理構成

このように、本書に沿ってトレーニングしていけば、文章としての伝わりやすさはどんどん伸ばせる。

一方で、書き始める前に、イイタイコトを明確にし、ストーリーを組み立てる文章の論理構成に

ついては内容が不足している(例えば、段落分けの基準が不明瞭)。

イシュードリブンやロジックツリーと聞いて「?」となってしまう方は、

いわゆるコンサルティングのノウハウ本を下敷きに、徹底的に頭の整理を鍛えることをおすすめする。

本書が対象とする文章力とコンサルティングの論理力の両輪を意識したい。



この本についてひとこと