広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

広告やメディアで人を動かそうとするのは、もうあきらめなさい。

広告が限界にきている問題の本質

広告業界は、今、揺れに揺れている。世界中でM&Aを繰り返し、No.1としてスケールを桁外れに拡大させる電通(総合広告代理店)。テクノロジーを武器に、新しいメディアに対応したソリューションを進化させるデジタルエージェンシー。彼らは、既存のビジネスモデルの限界を感じ取り、生き残りをかけた戦略に舵を切っている

しかし、彼らの限界の本質は、どこまで行っても広告主の方を向いたB to Bモデルにある。いくら広告主の財布(インクライアントシェア)をもぎ取れても、財布(パイ)の大きさには限りがある。

そもそも、なぜ広告やメディアで消費者を動かすことが難しくなってきているのか。この問題にもう一度立ち返り、消費者が動く強力な集客コンテンツを生み出して広告主の財布自体を大きくする発想に踏み込むことが、求められているのではないだろうか。

noun_58809_cc

主権が消費者に移ったということ

著者はLINE上級執行役員の田端信太郎と、PR会社ブルーカレント・ジャパン代表の本田哲也。彼らはまず、今の状況を「ポスト広告時代」と表現し、広告を「枠で買う」という発想や、「無料でコンテンツを見せるから広告を挟む」という抱き合わせ販売が通用しなくなったことを再確認していく。

著者の選挙運動のたとえは、非常に分かりやすい。広告活動を選挙運動に見立てると、「候補者(企業)」が「有権者(生活者・消費者)」に対し、「選挙カー(メディア)」の上で「演説(広告)」している図になる。しかし、現代のメディア環境は、「有権者(生活者・消費者)」たちがスマホで好きな情報を眺め、耳にはイヤフォンまでしており、いくら大きな声で「演説」しようと、話すら聞いてもらえないのだ。

最も重要なことは、そういったテクノロジーがメディア環境の前提条件を大きく変え一般ユーザーにメディア空間上の「編集権」「編成権」を移行させてしまった、ということだ。はっきり言おう。コミュニケーションやメディアに関わるビジネスの世界では、政権後退が起こっている。今や、「主権」は消費者サイドに移ってしまったのだ。

 

もう広告ですらないかもしれない

では、「主権」を握る消費者は、何を基準にコミュニケーションを選んでいるのか。著者は、動く消費者の大きさ(人数)によってポイントが異なることを踏まえ、1000人から10億人まで、1ケタ単位で消費者が動くツボを経験則として抽出している。ここでは、その中でも特に印象的な示唆をいくつか紹介したいと思うが、大事なことは、それぞれのツボにあわせてメディアを選ぶべきということ。当たり前だと思われるかもしれないが、いわゆる「広告」はいらないかもしれないという発想の選択肢を広げておけることが、消費者が動くかどうかの分かれ目になる。

1000人が動くポイント

この規模では、考えられた仕掛け(ヨコの力)より魅力的な求心力(タテの力)が重要。「やってみたい」というレリバンシー(自分事化)を強化するメッセージがカギになる。

10万人が動くポイント

より大きな組織化のためには集団を盛り上げる仕組み化が必要になってくる。いわゆるマスよりも、より結びつきの強いメディアの方が一般的に適している。

1000万人が動くポイント

元ネタを知らない人でも、改めて定義されたブームに乗っかってみたくなる運動作りが重要。マスメディアが得意とする領域だが、「バルス」ツイートや「レリゴー」ブームなど、最近は必ずしもマスメディア発ではないのが特徴。



この本についてひとこと