組織再編の税務処理チェックリスト

組織再編の税務処理チェックリスト

組織再編における税務スキルの意義

近年、共創型のカーブアウト等、前向きな選択と集中が日本企業にも評価されつつある。実務的には組織再編手続きを行うのだが、その際、特に税務面の手続きは、やり方次第で経済的なメリットが大きく異なる点で、特にケアすべき問題である。税務をどんなに縁遠く感じる方も、こと組織再編となれば、トップイシューとして認識する必要がある。今後、企業経営において組織再編が更に活用されることを踏まえると、いかに税務コストをかけずに組織再編するかのノウハウが、時には数百億・数千億円単位の違いを生むことになる。

 

分かりやすい判断フレームワーク

本書は、組織再編の税務を学ぶ上で、入門書として格好の1冊だと捉えている。組織再編の税務における大論点は、組織再編の方法が税制適格か否かであり、各組織再編における税制適格の要件はしっかりと明文化されている(ネットでもすぐに見つかる)。しかし、当然と言えば当然だが、要件を本当にクリアできているかどうか判断するには、もう一歩深い知識が必要なところがくせ者である。

そのような時、税務の専門家に直接訊く前に、初期的なQ&Aを用意してくれているのが本書である。本書はそもそも「実務上、間違えやすい場面を想定してチェックリストとして作成」されており、適格の判断であれば、適格要件ごとに用意されている質問に答えていけば確認ができる。

 

適格要件の判断に迷ったシーン

例えば、僕が関与した案件で論点になったのが、共同事業要件における「事業関連性」の判断である。グループ内再編に当たらない分割では、いくつかの共同事業要件を満たすことで税制適格になるのだが、再編の一方はSPC等のペーパーカンパニーではないものの、製造設備的な機能のみを担う会社で、それを“事業”と呼べるのか否かという点が論点になったのである。

これについて本書は、判断基準を①固定資産の存在、②従業者の存在、③売上の計上の3要素にブレイクダウンして示している。これであれば、充足しているか確認がとり易い。もちろん、最終的には専門家に確認が必要だが、1次スクリーニングとしては十分使える1冊である。

 

適格要件の判定以外にも

本書では、税制適格要件の判定以外にも、主に以下のチェックリストを提供している。

著者の佐藤信祐は、組織再編における税務について非常に平易な書きぶりで参考になる書籍を多数執筆しているので、問題意識にささるものがあればそちらもお勧めしたい。ちなみに、組織再編税制について、更に深く突っ込んだ論点を学びたい方は、少々難易度は高いが、『新・会社法実務問題シリーズ9 組織再編』(森・濱田松本法律事務所)が決定版だ。



この本についてひとこと