ソーシャルメディア進化論

ソーシャルメディア進化論

収益化(マネタイズ)の塔の建設

本書の優れているところは、ずばりソーシャルビジネスを“収益化”するポイントを論じていることである。そもそもソーシャルビジネスというと、「インターネットの心あたたまる関係」と「収益化」は両立しないというのが常識だと思われている節があり、何となく胡散臭く感じられることが多い。マネタイズに成功しているソーシャルビジネスは、特に日本では数えるくらいしかないのが実態だと思う。

しかしながら、ソーシャルビジネスの収益化は本当に難しいのだろうか?著者は、ソーシャルメディアの黎明期から見守り、企業メディアの立ち上げを自ら開拓してきた経験に基づいて、実務的に、理論的に、しかも分かり易くこれに反論している。花王、ベネッセ、カゴメ、レナウン、ユーキャンなど、数々のトップコミュニティを手がけた著者の話はソーシャルビジネスの根本を理解したい方、ソーシャルビジネスのリアルを知りたい方どちらにもたくさんの示唆を与えてくれる。

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「見える」人、「見えない」人

本書はまず、収益化を考える前に、インターネットに対する基本理解として、ネットワークがもたらした人と人、企業と人の関係の変化を捉えるところから議論をはじめていく。“そもそも論”として、ネットワークが僕らに何をもたらしたのか、僕らはネットワークを使って何を実現しようとしているのかが「見え」ないと、その中で企業コミュニティが果たし得る役割を理解することができないと、著者は強く考えている。

著者が読者を招待するコンピュータやインターネットの歴史と進化論の物語は、それ自体、読み物として抜群に面白いが、そこからエッセンスだけ抽出しようとすると、“FOOL”というふるまいのプリンシプルが一番重要なメッセージだろう。

 

ソーシャルメディアの盲点

この“FOOL”のふるまいにのっとって、僕らは様々なソーシャルメディアを生み出してきた。パソコン通信、BBS、ブログ、ネットゲーム、Wikipedia、Facebook、Twitter、LINE・・・。しかし、ここで著者は、実はこれらのソーシャルメディアが盲点を抱えていることを指摘する。

これらのソーシャルメディアは、どれもが“FOOL”の特徴を取り込み、利用者に恩恵を与えているが、同時に、コミュニティメンバーとつながればつながるほどかえって窮屈さを感じたり、各コミュニティが「繭化」してコミュニケーションの断絶が起きたり、あるいはコミュニティでの発言が“ソーシャルメディア用”になって、本音の発話が抑制されるような状況が生まれてやしないか。いわば生活者の声にもならない声、「マイノリティ以前の孤独」が隠れているのではないだろうか。あなたにも、「そう言われてみると・・・」という感覚はないだろうか。

 

企業コミュニティの意義

著者は、こうしたソーシャルメディアの盲点に、企業コミュニティが担うべき役割を見出していく。企業が価値観で共鳴し合う場を提供し、市場における対話が復活することで、「マイノリティ以前の孤独」に苛まれた消費者を社会につなげられないか。それこそが、企業が本来理想としている“社会につながる企業”を実現するカギになるのではないか。

後半では、この気づきをヒントにした、コミュニティビジネスのコツと事例が惜しみなく披歴されている。その中でも、僕が実際のコンサルティング・プロジェクトでも参考にしたポイントは次の4つだ。

 

口コミが生み出すロングテール

この中でも、コミュニティ収益化の本質的なポイントとなるのが、口コミが生み出すロングテールだ。口コミは、売る側では想像できない生活のリアリティと無数の生活シーンを切り取る言葉の集まり。リアリティと生活シーンが詰まった口コミだからこそ、別の生活者の心を動かすことができる。

はじめに、コミュニティ参加者同士の“共感”や“感動”が生まれることで、既存顧客のロイヤリティが高まり、そこから生まれる無数の口コミのどれかが新規顧客の関心にどこかでひっかかる。そうして参加者が増えることで、新たなコミュニケーションが生まれ、更なる価値観の共鳴が起きる。この循環モデルこそ、“FOOL”を体現する理想のコミュニティビジネスであり、収益化のミソだ。



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