事業再生と敗者復活

事業再生と敗者復活 (講談社現代新書)

事業再生と金融機関の関係

事業再生を語るには、レンダーである銀行の実態を知らなければならない。

バブル崩壊以降、銀行は不良債権を抱え、2002年の金融再生プログラム以前においては、

融資体質や不良債権処理の法的問題から、その処理が遅々として進まなかった。

その影響もあり、特に中小企業においては、貸し手(銀行)と借り手(企業)の関係が硬直化した

日本独特の構造の中で、借入金負担が収益力を毀損するという再起を阻む構図になってしまった。

現在、不良債権処理に係る法制度は、サービサー法等の制定により整ってきているが、

そもそも債務者は思い切って不良債権を処理し、債務者は事業再生によって価値を高めることで

債権者に報いるというあり方は、この国で理解されているだろうか。

本書は、中小企業の目線で、そうした不良債権に関連するビジネスの実態を描いており、

債権処理的な事業再生に求められるあり方を丁寧に説明した1冊だ。

 

事業再生のあるべき論

事業再生とは、バランスシートの過剰な負担を解消し、本業のキャッシュフローを正常化することだ。

バランスシートのリストラクチャリングには、債権放棄、債務の株式転換(DES)等の手段がある。

これらの手法は、債権者である企業は次なる成長に向けたチャンスになる一方、

債務者である銀行にとっては、当然痛みを伴うため、二つ返事で了承するわけにいかない

しかし、実は銀行にも融資を通した責任があるし、融資先がもう一度成長することで

回収が期待できるなら、一時的な痛みを伴っても計画的に譲歩を提示すべきではないだろうか。

そうは言っても、過去の右肩上がりの経済に馴れている銀行にとって、

「貸した金は返すべきだ」という論理から未だに抜け出すことができていないのが実態だ。

それが最も端的に表れたのが、産業再生機構のメンバーに銀行からの出向者が予定されていたことだ。

投資責任やConflicts of Interestをリテラシーとして理解していないこの状況では、

あるべき事業再生など生まれるべくもない。

 

現状を変える再生法の整備

そんな状況に変化が現れたのは、サービサー法の制定がきっかけだ。

サービサー法は、金融機関が債権を償却する際に課税をしないことを定めた制度のことである。

これにより、焦げ付いた不良債権を少しでも回収したい金融機関が、そうした債権をサービサー

(債権の回収や転売から利益を得る債権回収業者)に譲渡しやすくなったわけだ。

サービサーは元の債務額でなく、譲渡価格以上で回収できればいいため、

債務者にとっても結果的に債務圧縮となり、「三方よし」の事業再生が可能になる。

その他にも、法的整理、民事再生、最近事例の増えている事業再生ADRなど、

債務者と債権者の折り合いをつけるための制度が導入されることで、徐々に前に進んでいる。

本書では、これらの制度の概要が丁寧に解説されており、初学者には便利な内容になっている。

 

再生スキルとは

もちろん、ユニチカの例をはじめ、現在も積もりに積もった膿のような不良債権は山ほどあるが、

それでも、このように制度が充実することで、外科的な債務処理は徐々に進んでいる。

だとすると、次なる問題は再生会社をいかに建て直すかの実質論にある。

再生前の段階(デューディリジェンス)でいかにビジネスのポテンシャルを見極められるか、

再生決定後の抜本的な再生計画や、実行のための実行体制まで用意されているか。

本書では、産業再生機構の冨山氏との対談や、事業再生の事例も掲載されており、

そうした内科的な事業再生(バリューアップ)の実態を垣間見るのに役に立つ。

ただし、本書の中心はあくまで債務整理の外科手術(財務リストラクチャリング)なので、

バリューアップ論については別の書籍でカバーすると、事業再生の全体像を通観することができる。



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