なぜマネジメントなのか

なぜマネジメントなのか―全組織人に今必要な「マネジメント力」 What Management Is

“マネジメント”とは何か

“マネジメント”とは何かと問われたら、あなたは何と答えるだろうか。

マネジメントという言葉は、何にでも使いやすい便利な言葉だが、その本質は何だろうか。

いわゆる経営戦略をイメージされることも多いが、どこか意味合いがずれている気がする。

僕が思うに、あなたが経営する立場になったとして、その日から果たすべき“義務”のようなニュアンスだ。

P.F.ドラッカーも、本書に対する賛辞の言葉の中で、この点をまさに指摘している。

マネジメント書の多くは単に手段を説いているが、

本書は「マネジメントの務め」を描いた、非常に読みやすい一冊である。

では、この「マネジメントの務め」とは、一体どのようなものなのか。

本書の結論から言えは、「現実を見つめ、目標達成に向かってトレードオフを受け入れること」である。

本書は、常に“実現”の方向を向くマネジメントとしての視座を、経営哲学として丁寧に論じている。

マネージャーの教育バイブルとして、若いうちから是非おススメしたい一冊である。

 

実現主義のマネジメント

著者がドラッカーを慕っているところもあり、本書は経営“哲学”的なテイストが強い。

しかし、ハーバード・ビジネス・レビューの編集者でもある著者は、得意のケーススタディで、

議論を単なる抽象論に留めず、具体的なケイパビリティにブレイクダウンして論じている。

机上の分析や想像のビジネスモデルを実行して成功した例は稀だというのが著者の考えであり、

GM、フォード、トヨタ、ウォルマート、ペプシコ、イーベイ、サウスウェスト航空など、

示唆に富んだケースが豊富に差し込まれているところが本書の魅力である。

マネジメントの原則は、ビジネス理論、つまりシステム全体がどう動くのかのモデルに

基づいて機能する。重要な決断やイニシアチブは、すべて、このモデルを試すテストになる。

利益は、それ自体が重要なのと同時に、自分のモデルが機能しているかどうかを

知るためにも重要だ。もし期待した結果を達成できなければ、ユーロディズニーがしたように

モデルを再検討する。これは、科学的モデルのマネジメント版で、まず仮説を立てるところから始まり、

実行でテストし、必要なら修正を加えるのだ。

 

ユーロディズニーの事例

ここで触れられているユーロディズニーの話というのは、1992年にオープンしたユーロディズニーが、

アメリカで大成功を収めたプラクティスをモデルに作られながら、実際には大失敗となった実例のことである。

アメリカでは、ゲストは1回の来場で様々なレストラン、乗り物、ショッピングが楽しめることに満足を感じるのに対し、

ヨーロッパでは、時間に正確に、また着席スタイルで落ち着いて食事を楽しむことが望まれていたため、

ゲストにとってアメリカのシステムは不満以外の何物でもなかったのである。

ユーロディズニーはその後、ゲストの声にひとつひとつ応え、ビジネスモデルを丁寧にチューニングすることで、

最終的には軌道に乗せることに成功する。

戦略万能主義が蔓延する昨今では、こういう事例に対して、当初の戦略性の甘さに目を向ける傾向がある。

しかし、1992年の時点で構想された戦略は、いかに精緻に練ろうとも仮説でしかない。

仮説を実行した後に発生する、数々の問題をクリアして実現に持っていく現実視点を併せ持ってこそ、

ビジネスモデルが全体として成功に導かれるという好例だと思う。

 

成果を出すという感覚

このことは先日お会いした、一流校のMBAホルダーで戦略コンサル出身のある方も指摘していた。

彼は、その能力を買われ、ある企業にCEOとして派遣された。

そこで、彼はこれまでの経験を活かし、派遣早々、Power Pointで企業の本質的な課題と解決策を整理し、

そのロードマップに基づいて社員と一緒に動こうとしたのだが、どうも伝わらなかったという。

その後、彼はCEOとして経験を積んでいくうちに、自然と仕事のスタイルを変えていくことになる。

例えば、コンサルタントとしては資料の完全性にこだわるべきだが、

今は現場が分かるなら汚い資料でも十分であるし、浮いた時間を社員とのコミュニケーションや

プロジェクト体験の共有にあてた方が、現実は回り出したのだ。

もちろん、戦略的な視点を疎かにする必要はないが、戦略と現場の両方を見つめながら、

PDCAを何度もグリグリと回すことでしか、結局成果は出ないのである。

このあたりの感覚は、最終的には体験によってしか得られないものだとは思うが、

改めて本書を振り返って、この感覚を読者に伝えるリアルさ、生々しさがうまく描かれているなと感心する。



この本についてひとこと